りょうだいけっかんうしつきししょう(たうじっひ・びんぐきけいをのぞく。)両大血管右室起始症(タウジッヒ・ビング(Taussig-Bing)奇形を除く。)Double-outlet right ventricle
小児慢性疾患分類
- 疾患群4
- 慢性心疾患
- 大分類34
- 両大血管右室起始症
- 細分類43
- 両大血管右室起始症(タウジッヒ・ビング(Taussig-Bing)奇形を除く。)
病気・治療解説
概要
肺動脈と大動脈の両大血管のうち、ひとつは右室から完全に起始しており、他のひとつが50%以上右室から起始している先天性心疾患。全先天性心疾患の約1.5%を占める。大動脈弁、肺動脈弁は僧帽弁と線維性連続がないのが普通である。心室中隔欠損VSDが存在する。本症は心室中隔欠損の部位と大血管相互の位置関係により分類される。心室中隔欠損の部位は①大動脈弁下subaortic ②肺動脈弁下subpulmonic ③両半月弁下doubly committed(①+②) ④遠位型remote(non-committed)に分けられる。大血管関係はd型、l型に分けられる。Taussig-Bing奇形は両大血管右室起始の中で、両大血管がside by sideにならび、肺動脈弁下のVSDのために肺動脈が中隔に騎乗しており、肺動脈狭窄を伴わない型で、しばしば、大動脈離断や大動脈縮窄を合併することが多い。大動脈弁下・両半月弁下のVSDを有する型で肺動脈狭窄のない型ではPHの進行が通常のVSDより速いので乳児期の一期的心内修復術が望ましい。大動脈弁下・両半月弁下のVSDを有する型で肺動脈狭窄がある型ではファロー四徴症と同様に肺動脈低形成があれば短絡術などの姑息術の後にRastelli手術が実施される。肺動脈弁下のVSDを有するDORVでは大血管転換症と同様に大血管スィッチ術が施行されることが多い。遠位型VSDではFontan型手術の適応となる。一般に、本症は重症で、術後の問題が発生する率も高く、予後不良の疾患である。
疫学
先天性心疾患の約1.5%を占める。手術症例では大動脈弁下が約50%、肺動脈弁下が約30%、両半月弁下10%、 遠位型10‐20%を占める。男女比は3:1で男児に多い。
症状
病型にかかわらず、肺動脈狭窄を合併すると肺血流が減少しチアノーゼが強くなる(ファロー四徴症型)。肺動脈狭窄のない大動脈弁下心室中隔欠損症例では、肺血流は増加して肺高血圧を生じ、大きな心室中隔欠損に似る(心室中隔欠損型)。肺動脈弁下心室中隔欠損例では、左室の駆出血は、直接肺動脈へ駆出され、心室中隔欠損を伴う大血管転換と類似の血行動態となり(完全大血管転換型)、新生児期からチアノーゼ、呼吸困難や心不全を呈しやすい。
診断
【心エコー図】
心エコー図にて心室中隔欠損とともに、肺動脈と大動脈の両大血管のうち、ひとつは右室から完全に起始しており、他のひとつが50%以上右室から起始している所見を認める。心室中隔欠損が存在する。心室中隔欠損の部位は大動脈弁下、肺動脈弁下、両半月弁下、遠位のどこにあるか確認する。僧帽弁と半月弁は線維性結合がないのでconusが観察される。肺動脈狭窄がある型と肺高血圧がある型がある。右室肺動脈間の狭窄部位は弁、弁下、弁上狭窄がある。
【胸部エックス線】
病型により心拡大を認める場合と認めない場合がある。肺血管陰影も病型により増強する場合と減少する場合がある。
【心電図 】
右軸偏位、右室肥大を認める。
【心臓カテーテル・造影所見】
造影所見で、心室中隔欠損とともに、心室中隔欠損とともに、肺動脈と大動脈の両大血管のうち、ひとつは右室から完全に起始しており、他のひとつが50%以上右室から起始している所見を認める。心室中隔欠損が存在する。僧帽弁と半月弁は線維性連続がない。肺動脈狭窄を伴う場合には右室と肺動脈間に圧較差を認める。
治療
【内科的治療】
病型により対応が異なる。肺動脈狭窄PSを伴わない、大動脈弁下ないし両半月弁下の心室中隔欠損VSDを有する型では肺高血圧PHを伴う大きなVSDと同様に手術までは心不全治療が主体となる。PSを伴う、大動脈弁下肺動脈弁下のVSDを有する型はチアノーゼに対する対応が中心となる。
【外科的治療】
大動脈弁下・両半月弁下のVSDを有する型で肺動脈狭窄のない型ではPHの進行が通常のVSDより速いので乳児期の一期的心内修復術が望ましい。大動脈弁下・両半月弁下のVSDを有する型で肺動脈狭窄がある型ではファロー四徴症と同様に肺動脈低形成があれば短絡術などの姑息術の後にRastelli手術が実施される。肺動脈弁下のVSDを有するDORVでは大血管転換症と同様に大血管スィッチ術が施行されることが多い。遠位型VSDではVSDはinlet muscularやtrabecular septumに存在しFontan型手術の適応となる。
予後
生命予後は本症の型や手術様式により異なる。一般に、本症は重症で、術後の問題が発生する率も高く、予後不良の疾患である。
小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。
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