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じゅうふくだいどうみゃくきゅうしょう
重複大動脈弓症Double aortic arch disease

小児慢性疾患分類

疾患群4
慢性心疾患
大分類58
血管輪
細分類77
重複大動脈弓症

病気・治療解説

概要

右大動脈弓と左大動脈弓の残存により重複大動脈弓となり、血管輪が形成される。左右の大動脈弓は合流して下行大動脈となる。左右大動脈弓に挟まれることにより気管、食道が圧迫され症状が出現する疾患。

病因

左第4鰓弓動脈と背側動脈第8分節の遺残により左右の大動脈弓が残存し重複大動脈弓が形成される。ほとんどの場合、右大動脈弓の方が太い。分枝は対称的で、右大動脈弓から右総頸動脈と右鎖骨下動脈が、左大動脈弓から左総頸動脈と左鎖骨下動脈が起始する

疫学

先天性心疾患に合併することは稀である。時にFallot四徴症などのチアノーゼ性先天性心疾患に合併して生じる

臨床症状

新生児早期から高率に気管・食道圧迫症状が出現する。気管圧迫症状としてはほぼ全例に慢性の咳嗽、喘鳴が認められる。重症化すると呼吸困難やチアノーゼが出現する。この呼吸困難は哺乳により増悪し、後弓反張の姿勢を取ることで軽減する。一方、食道圧迫症状としては嚥下障害と嘔吐が認められ、重症化すると体重増加不良となる。軽症例では離乳食の開始後に固形物に対する嚥下障害が出現することがある

診断

理学的所見には特異なものはない。心聴診所見では心音は正常で、意義ある心雑音を聴取しない。肺聴診にて主に吸気時にwheezesを聴取することがある。
画像診断が有用である。非侵襲的方法としてはMRIおよび心エコー・ドプラ検査がある。MRIは形態診断に極めて有用であるが、深睡眠を必要とするので新生児期・乳児早期に施行する場合は十分な監視が必要である。心エコー・ドプラ検査では重複の大動脈弓が描出されることがある。また、心内奇形を合併している場合にはその診断が可能である。一方、低侵襲的方法としてはMD-CT(multi detector-row CT)があり、重複大動脈弓の形態ならびに気管・食道との解剖学的位置の評価や気管・食道に対する圧迫の診断に適している。
胸部エックス線正面像では左右の大動脈弓が認められることがある。気管の圧迫の程度が強ければcheck valveとなり両側肺は過膨張像を呈する。
心臓カテーテル・心血管造影検査では上行大動脈造影により左右の大動脈弓が描出され、また、気管・食道の圧迫の程度も診断可能となる。
心電図にはほとんどの場合、異常所見を認めない。
呼吸器症状が重篤の場合には気管支鏡検査を行い、大動脈からの圧迫の部位および気管支の狭窄の程度を評価する

治療

新生児・乳児早期から呼吸器・消化器症状が認められる場合には早期に外科的治療が必要である。多くの場合、細い方(一般的には左動脈弓)の動脈弓を結紮・切断し、血管輪を解除する。気管・食道の圧迫症状が軽度の場合には経過観察し、乳児期後期ないしは幼児期に血管輪解除術を施行する場合もある。一方、血管輪の解除術を施行後も呼吸器・消化器症状が改善しない場合には気管支、食道の再建術やステントの留置を行い狭窄部位の拡大術を行う場合もある。ただし、効果については意見の分かれるところである

予後

外科的治療により気管・食道圧迫症状が消失するような症例の予後は良好である。一方、血管輪の解除術を施行後も呼吸器・消化器症状が改善しない場合には予後不良となる場合もある

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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