みとこんどりあでぃえぬえーとつぜんへんい(りーしょうこうぐん、めらす および まーふをふくむ。)ミトコンドリアDNA突然変異(リー(Leigh)症候群、MELAS及びMERRFを含む。)Diseases due to mitochondrial DNA mutation
小児慢性疾患分類
- 疾患群8
- 先天性代謝異常
- 大分類4
- ミトコンドリア病
- 細分類56
- ミトコンドリアDNA突然変異(リー(Leigh)症候群、MELAS及びMERRFを含む。)
病気・治療解説
概要
ミトコンドリアはほとんど全ての細胞に存在する細胞内小器官であり、その最大の役割はエネルギー(ATP)の生合成である。ミトコンドリアの働きが低下することが原因で起こる病気を総称しミトコンドリア病と呼び、病気の主座がどこであるかによりミトコンドリア脳筋症・肝症・心筋症などに分けられるが、全てのミトコンドリア病で全身の症状が発現する危険がある。ミトコンドリア病の症状の多くはエネルギー産生不足に起因するのでエネルギーを大量に必要とする臓器・組織に症状が現れやすく、特に幼小児期には、①脳筋症状に加えて、②消化器・肝症状、③心筋症状が3大症状とされる。従来からミトコンドリア病の中心的存在であった、いわゆる‘ミトコンドリア脳筋症’は、比較的軽症のミトコンドリア病に属し、年長・成人発症例に多い。
疫学
ミトコンドリア病全体では5,000出生に1人の頻度であるが、各病型の患者は希少疾患に属する。
病因
ミトコンドリアDNA点変異と重複の場合の原則を述べる1,2)。DNA欠失の場合の原則は57の項を参照されたい。通常は母系遺伝である。父が病因遺伝子を持つ危険はない。母は通常異常ミトコンドリア遺伝子を持っているが、母本人は発病している場合もいない場合もある。次子再発危険率は理論上100%であるが、ヘテロプラスミー等の理由で症状の出方が千差万別であることには注意が必要である。男性患者が子に病気を伝搬することはない。女性患者の場合は子に100%病因遺伝子を伝えるが、同じく症状の出方には個人差がある。一部の遺伝子異常(m.8993T>G(C), m.3243A>G, m.8344A>G, m.11778G>A)では子の病状と母の血液中の病因遺伝子の割合には相関があるとの報告もあるが、これはあくまでも経験的なものであり遺伝カウンセリングに使ってはならない。
症状
いわるる4大臨床病型をいわれるものを表1に示す3)。
診断
治療
対症療法が中心である。発作時はエネルギー消費を抑えるため安静・睡眠が奨励される。糖質制限と脂質優先摂取、バルプロ酸などのミトコンドリア毒を避けること、発作時にはL-カルニチン、コエンザイムQ、ビタミンB1・Cを中心とするビタミンカクテル療法を行う。いくつかの原因療法も考案中であり、中でもMELASに対するL-アルギニン療法はまもなく保険認可される見通しである。他に治験が進行ないし計画中の薬剤として、ピルビン酸ナトリウム、PBI-743、5-アミノレブリン酸などがあげられる。
成人期以降
病型により千差万別であり一概には言えないが、多くのミトコンドリア病の患者は大小のハンディキャップを背負いつつ成人期に移行する。年少の内から、小児科医は成人各科医師との移行期医療を模索しつつ診療に当たる必要がある。そのための重症度分類も、9つのセクション(日常生活動作(ADL)、高次脳機能、運動、視覚、聴覚、心合併症、腎機能、血液機能、肝機能)から成るミトコンドリア病の症状の多様性に配慮したものが、診断基準に続いて難病ホームページに公開されている。
参考文献
1) 大竹 明.ミトコンドリア病.松原洋一、呉 繁夫、佐合治彦(編),こどもの病気 遺伝について聞かれたら 診断と治療社,東京,2015; 134-136
2) Chinnery PF, et al. Mitochondrial Disorders Overview. In: Pagon RA, et al.: eds., GeneReviewsR. Seattle (WA): University of Washington, 1993-2015. [http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1224/]
3) 大竹 明.ミトコンドリア脳筋症.監修:北川泰久、寺本 明、三村 将 編集:飯森眞喜雄、内山真一郎、片山容一、岸本年史、水澤英洋,神経・精神疾患診療マニュアル 日本医師会雑誌第142巻特別号(2) 生涯教育シリーズ-85南山堂 東京 2013; S240-S241
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