びまんせいめさんぎうむこうかしょうびまん性メサンギウム硬化症Diffuse mesangial sclerosis; DMS
小児慢性疾患分類
- 疾患群2
- 慢性腎疾患
- 大分類1
- ネフローゼ症候群
- 細分類2
- びまん性メサンギウム硬化症
病気・治療解説
概要
生後1年以内に発症するネフローゼ症候群のうち,3か月以降に発症する乳児ネフローゼ症候群(INS)に分類の代表疾患である。多くは生後3か月以降にタンパク尿が発症し,発症後数か月以内に末期腎不全になる.フィンランド型の先天性ネフローゼ症候群と異なり,羊水中のαフェトプロテインや胎盤重量は通常,正常である。
診断
病理組織所見でびまん性の糸球体硬化像を認めるが,通常メサンギウム増殖像は認められない。特徴的な硬化した糸球体周囲を増殖した上皮細胞が覆う像(crown-like appearance)が認められる。びまん性のメサンギウム硬化像を認めるが,メサンギウム細胞増殖像はない。しかし,DMSの確定診断のための特異的な病理所見は確立していない。
病因
DMSは,Denys-Drash症候群*1,Pierson症候群*2,Galloway-Mowat症候群*3,nail-patella症候群*4などの症候群に合併することが知られ,Denys-Drash症候群ではWT1,Pierson症候群ではLamB2,nail-patella症候群ではLMX1B遺伝子異常が認められる。また,孤発例においても,WT1またはPLCE1遺伝子の異常が原因となっていることが指摘されている1, 2)。
*1 Wilms腫瘍,内外性器異常
*2 精神遅滞,小瞳孔
*3 筋緊張低下や発達遅延を伴う小頭症,裂孔ヘルニア
*4 爪や膝蓋の形成不全,腸骨角状突起(iliachom)
治療
DMSに対する根本治療はなく,高度ネフローゼおよび慢性腎不全に対する管理が重要となる。
ネフローゼ期には浮腫の管理,栄養管理,感染症対策などが重要である。
慢性腎不全に対しては通常は腹膜透析によって管理する。体重が10kgを越えれば腎移植を考慮する。ただし,Wilms腫瘍を合併するDenys-Drash症候群では,腫瘍腎の摘出,化学療法が行われ,移植は再発の有無を確認して3歳以降に行われる場合が多い。
遺伝子異常を伴う先天性ネフローゼ例に対して,シクロスポリンの有効例が報告されている(3)。
予後
多くは発症数か月で末期腎不全へと進行する。
参考文献
1) Jalanko H, Holmberg C. Congenital nephrotic syndrome.In Avner ED, et al. (Eds). Pediatric nephrology, 6thed, Philadelphia, Lippincott Williams & Wilkins, 601‐619,2009
2) Gbadegesin R, Hinkes BG, Hoskins BE, et al. Mutations in PLCE1 are a major cause of isolated diffuse mesangial sclerosis (IDMS). Nephrol Dial Transplant 23:1291-7, 2008
3) Büscher AK, Kranz B, Büscher R, et al. Immunosuppression and renal outcome in congenital and pediatric steroid-resistant nephrotic syndrome. Clin J Am Soc Nephrol 2075-84, 2010
小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。
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