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かんどうみゃくろう
冠動脈瘻Coronary artery fistula

小児慢性疾患分類

疾患群4
慢性心疾患
大分類60
動静脈瘻
細分類83
冠動脈瘻

病気・治療解説

概念

右または左の冠状動脈が瘻の血管を介して直接心、または大血管腔に開いている。短絡が多く肺高血圧を合併する場合には乳児期に多呼吸、体重増加不良などの心不全の症状を生じる。短絽が少ない場合には小児期には心臓の雑音を呈するだけで、特別の症状はない。心内膜炎予防、心不全、心筋虚血、瘻の破裂リスクが治療適応である。小さな瘻血管の治療適応はない。年齢とともに瘻血管は拡大する傾向があるので、ある程度以上の瘻血管なら治療適応がある。治療は、カテーテルで塞栓術か、手術で結紮する。術後、抗血小板薬や抗凝固薬が必要なこともある。術後、冠動脈血栓で突然死することもある。瘻の血管が比較的小さいとき、冠動脈の拡大が無いときは、予後は良好である。治療後も大きな瘻血管や冠動脈が残存するときは、予後不良のことがある。

病因

心臓の形成過程において、冠動脈が形成される前は、心室壁は海綿状で、心室腔から直接灌流されている。冠動脈が心外膜から形成されるにしたがい、海綿状構造は消失するが、この際に、冠動脈と海綿状構造の一部が連結すると、本症となる

疫学

比較的まれな疾患である。冠動脈造影で偶然発見されることもある

臨床症状

本症の90%までは、比較的短絡が少なく、肺/体血流量比は2以下である。この場合には肺動脈圧、右心圧は正常である。短絡が多く肺高血圧を合併する場合には乳児期に多呼吸、体重増加不良などの心不全の症状を生じる。短絽が少ない場合には小児期には心臓の雑音を呈するだけで、特別の症状はない。しかし成人、特に40歳過ぎになると労作時の呼吸困難や疲労、心不全の症状などが増加する。雑音は通常連続性雑音が胸骨下部左縁(右室に開口する場合)または、右縁(右房に開口する場合)にきかれる。左室に開口する場合には主に拡張期雑音がきかれる。脈拍はboundingに触れる。時に胸痛などの虚血症状がみられる

診断

【胸部エックス線所見】
心拡大を認めることがある。
【心電図】
T波の平低化や、ST低下を認めることがある。
【心エコー図】
心エコーでは、拡大した冠動脈を認める。シャント量が多ければ心腔の拡大がみられることがある。心室機能の低下は稀である。
【心臓カテーテル・造影所見】
大動脈または選択的冠動脈造影で拡大、蛇行した冠動脈と還流部位を同定することができる。
【CT所見】
蛇行した冠動脈と還流部位を同定することができる。
【鑑別診断】
通常は連続性雑音で発見される。したがって連続性雑音を呈する動脈管開存症、心室中隔欠損兼大動脈弁閉鎖不全、Valsalva洞動脈瘤の破裂、肺または他の動脈瘻、大動脈肺動脈中隔欠損、その他を鑑別診断するべきである

治療

心内膜炎予防、心不全、心筋虚血、瘻の破裂リスクが治療適応である。小さな瘻血管の治療適応はない。年齢とともに瘻血管は拡大する傾向があるので、ある程度以上の瘻血管なら治療適応がある。
治療は、カテーテルで塞栓術か、手術で結紮する。術後、抗血小板薬や抗凝固薬が必要なこともある。術後、冠動脈血栓で突然死することもある

予後

瘻の血管が比較的小さいとき、冠動脈の拡大が無いときは、予後は良好である。治療後も大きな瘻血管や冠動脈が残存するときは、予後不良のことがある

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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