1. HOME
  2. 先天性修正大血管転位症

せんてんせいしゅうせいだいけっかんてんいしょう
先天性修正大血管転位症Congenitally corrected transposition of the great arteries

小児慢性疾患分類

疾患群4
慢性心疾患
大分類37
先天性修正大血管転位症
細分類46
先天性修正大血管転位症

病気・治療解説

概要

右房が解剖学的左室につながりその左室から肺動脈が起始し,左房が解剖学的右室につなが りその右室から 大動脈が起始する 。心内に他の奇形がない場合,静脈血 は肺動脈へ,肺静脈血は大動脈へ流れる 。しかし,心室中隔欠損や心室中隔欠損+ 肺動脈狭窄の合併が多く ,それぞれの血行動態と臨床症 状を呈する 。心房心室の特 異なつながりのため,房室プロックや頻拍発作などの不整脈が多い。

発生・解剖

心房位正位の場合,発生初期に原始心筒が正常の右への屈曲( d-loop) ではなく , 左に屈曲( Loop) するために発生する 。
右房と 解剖学的左室 ,左房と 解剖学的右室のつながり を房室不一致(atrio ventricular (AV) discordance ),左室と 肺動脈およ び右室と大動脈のつなが りを心室大血管不一致( ventriculo arterial (VA) discordance)という 。内臓正位( situs solitus)で,左室が右側,右室が左側に位置 し,これを l loopに因んで 「 L」 位と 表現する 。大血管は大動脈が左前に ,肺動脈が右後での相互関係で平行に起始し,この左右関係を 「 L」 転位(1-malposition) と呼ぶ。 こ の場合の区分診断は SLL”と なり ,内臓逆位( situs inversus) では “IDD”と なる。
合併奇形はまったくなく単独のことがある (isolated corrected TGA) が,多くの場合, 心室中隔欠損,肺動脈狭窄(弁性,下)ま たは閉鎖,三尖弁Ebstein様変化, 心房中隔欠損などを認める。
房室間刺激伝導系は% 房室聞でAV discordance によってHis束が長く線維化の 所見を認め,これが本症の房室プロッ クの原因と考えられる。さ らに,正常ではKoch の三角に存在する房室結節( 後方結節) にはじ ま るが,本症では右側房室弁輪付近前方に房室結節( 前方結節)が存在することが多い。また後方結節のほかに前方結節が存在し ,長い His束から 心室形態に対応した bundle branch を分岐する。後方結節は通常低形成であり,心室中隔の頂上を通る slingによって前方結節に連結されることもある

病態生理

解剖学的右室が系統(動脈側) 心室として作動しており ,加齢と と も にポンプ機能 が低下する。特に三尖弁(この場合,動脈側房室弁: 通常の僧帽弁に相当) 閉鎖不全 の併発は心機能の低下を早め,予後を悪くする。これは,右室が1本の冠動脈でのみ支配されること,刺激伝導系も 右脚l本のみで伝導されること,三尖弁そのもの が系統( 動脈側) 心室を支える には形態的に不適当であること,左室のようにしっかりした 2 本の乳頭筋をも たないこ となどによる九心内に奇形がない場合,静脈血は肺動脈へ,肺静脈血は大動脈へ流れ,血流は修 正されていて正常である。心室中隔欠損合併では左側の ‘右室” から右側の左室, 肺動脈への短絡があり ,肺血流量の増加 と “右室”への容量負荷と なる。心室中隔 欠損+肺動脈狭窄は Fallot 四徴と同様の血行動態であるが ,漏斗部狭窄ではないので低酸素発作はない。肺動脈閉鎖では動脈管依存性と なる 。三尖弁閉鎖不全による “右室”への容量負荷は心機能を ( 左室に比して) 容易に低下させる

臨床所見

■症状
心室中隔欠損と肺動脈狭窄・ 閉鎖合併例ではチアノー ゼを示す。大きい心室中隔 欠損では乳児期から心不全をみる 。房室ブロッ ク,頻拍発作も 多い。心内合併奇形 を伴わない例は当初無症状であるが,成人期になって房室ブロッ ク,三尖弁閉鎖不全,右室不全( 前述) が出てくる。

■聴診所見
大動脈が胸壁に近いため ,II音が充進する 。心雑音は,肺動脈狭窄例では駆出性 収縮期雑音,心室中隔欠損例 ・三尖弁閉鎖不全例では汎収縮期雑音が ある

検査所見

■胸部エックス線
心の位置は,mesocardia ( 中心症) , dextrocardia ( 右心症) , levocar dia ( 左心症) とさまざまである 。縦隔陰影の左側のラインは左前方に位置する上行大動脈が形成 し,なだらかである 。
肺血管陰影,心サイズ (心胸比)は合併奇形による。大きな心室中隔欠損があれば血管陰影は増え心拡大がある 。 それに肺動脈狭窄 ・閉鎖が加われば肺血流は減少し, 心拡大はない。三尖弁閉鎖不全では心臓は大きいが肺血管陰影は正常である 。

■心電図
合併奇形のない例では ,左軸偏位と 右側胸部誘導 ,III, aVRでのQ波( reversal pattern of Q wave) が特徴的である 。心室中隔欠損や肺動脈狭窄などの合併 例では,平均QRS電気軸は正常ないし 右軸偏位に移行 し,また心の位置によっても 変化すEbstein奇形を伴うと見かけ上の左脚ブロッ クパタンを示す。
房室ブロッ ク はI—III度まで含める と約半数の例で認める 。生下時より,あるいは経年的に進行する。右側あるいは左側の副伝導路の合併によりA波を呈し頻 拍発作を認めることや,前方と後方の房室結節と slingを介する頻拍発作を認めることがある。

■心エコー
右房には下大静脈が直接つながる。心室短軸断面で心室中隔は右前から左後方の 角度,あるいは胸壁に直角に位置する 。中隔面が平滑で 2 つの乳頭筋を有するか左室形態心室が右房につながり,粗い肉柱形態の解剖学的右室が左房につながる。大血管の短軸断面では,左前と右後方に 2 つの大血管を認め,右後方の血管が左右に分岐し肺動脈と診断でき る 。左側の三尖弁にEbstein様変化 を認めることがある

心臓カテーテル検査

■カテーテル走行および圧・短絡所見
内臓正位の場合,カテ ―テルは右房の真ん前の右側僧帽弁から左室に,そして弁輸通過後,真後ろへと肺動脈に進む。
単独型では,圧・酸素飽和度に何ら異常はない。狭窄,中隔欠損,弁逆流などを 反映して圧差や, step-upをみる。術中房室ブロックが起こりやすい。

■心血管造影
右側心室造影では,肉柱の細い解剖学的左室が描出 され,肺動脈は後上方より起始する 。肺動脈弁と房室弁は線維性結合を 認める 。左側心室造影では粗い肉柱が認められ,左前方より大動脈が起始する 。大動脈弁と房室弁は漏斗部により分離される 。心室中隔は胸壁から垂直に認められることが多い。 合併奇形により,その所見を呈する

予後

合併奇形を伴わない場合 ,80歳代まで生存した報告がある。 しかし ,合併奇形の 重症度や系統心室の右室機能不全などによる死亡があり ,10年生存が64% との デ ―タ も ある 。また,房室プロックは加齢とともに増え,かつ重症化する

治療

動脈管依存性の例ではプロ スタ グラ ンジンE,の点滴静注,大動脈肺有動脈短絡術が必要である。
心室中隔欠損はパッチで閉鎖するが,その際刺激伝導系の走行に特に注意が必要である 。心室中隔欠損十肺動脈狭窄・閉鎖合併例では,欠損孔閉鎖と 心外導管を 用いて解剖学的左室と 肺動脈を 結ぶRastelli手術 (conventional Rastelli法と呼ぶこともある)が行われる。三尖弁閉鎖不全には弁形成ないし置換術がある。1990年代から ,解剖学的右室機能の長期予後を考慮して,Mustard手術あるいはSenning手術と Rastelli手術やJatene手術を組み合わせて,左室を動脈側心室とする解剖学的修復術( double switch operation) が試みら れている 。

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

ピックアップ・イベント

ニュース一覧

イベント一覧

この疾患に関するピックアップ記事、イベントはありません

実施中の治験/臨床試験