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しょとういそばくがとうぶんかいこうそけっそんしょう
ショ糖イソ麦芽糖分解酵素欠損症congenital sucrase-isomaltase deficiency; CSID

小児慢性疾患分類

疾患群12
慢性消化器疾患
大分類1
難治性下痢症
細分類2
ショ糖イソ麦芽糖分解酵素欠損症

病気・治療解説

概要

蔗糖・イソ麦芽糖分解酵素欠損症(CSID)は、二糖類である蔗糖と麦芽糖を腸で分解する酵素の働きが欠損したり、著しく低下しているために、蔗糖、麦芽糖、および澱粉を小腸で分解して吸収することができず、砂糖や澱粉を摂取すると激しい下痢と腹部膨満をきたす先天疾患である。

疫学

CSIDの頻度はヨーロッパ系では5,000人に1人とされているが、グリーンランド、アラスカ、カナダエスキモーでは非常に高く20人に1人とみなされている。アジア系人種では白人と比べてはるかに稀であるが、正確な疫学は不詳である。

病因

蔗糖と麦芽糖は、二つの単糖が結合した構造をもつ二糖類であり、スクラーゼ・イソマルターゼという小腸上皮の冊子縁(微絨毛)に発現している分解酵素の働きによって、それぞれブドウ糖と果糖、および2分子のブドウ糖に分解されてはじめて小腸上皮から吸収される。これらはsucrase-isomaltase (SI) 遺伝子から作られるが、その変異によってそれぞれの酵素の活性が損なわれると、蔗糖や麦芽糖を単糖に分解することができなくなる。消化されずに大腸に流れ込んだ糖質は下痢や腹部膨満などの症状をもたらす。その構造特性から、通常スクラーゼ活性の方が低下しやすく、イソマルターゼ活性は比較的保たれていることが多い。SI遺伝子は染色体3q26.1に存在し、本疾患は常染色体劣性遺伝形式をとる。

症状

CSIDの患児はブドウ糖水や母乳、ミルクでは下痢をきたさず、蔗糖を含むものを摂取した時点から下痢を発症する。症状の強さは摂取量によるが、著しい腹部膨満と腹鳴を伴って、大量の水様下痢を呈する。ジュースや果物の他、キャベツや白菜などの野菜類を摂取しても下痢が悪化する。蔗糖と澱粉・麦芽糖の摂取をやめると下痢は治まるが、診断が確定されないまま摂取を続けると重篤な脱水や体重増加不良の原因となる。蔗糖は少量でも強い症状をきたすのに対して、澱粉・麦芽糖では下痢・腹部膨満の程度が比較的軽い傾向がある。

診断

発症の時期ときっかけ、悪化と改善に関係する食事内容などについて注意深い問診を行うことで本症を積極的に疑うことができる。CSIDでみられる下痢は糖質の消化不良による浸透圧性下痢であり、塩類の喪失を伴わず、大腸内での糖質の発酵過多のため便pHが低くなる(pH <5.5)。乳児期の慢性、非感染性下痢の原因として、乳糖不耐症、食物アレルギー(乳、大豆など)との鑑別が必要である。特異的診断法としては、経口糖質負荷での血糖値測定と呼気中H2ガス測定試験がある。経口的にブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、および蔗糖を負荷し、経時的に採取した呼気中のH2ガス濃度を測定し、基礎値から20ppm以上の濃度上昇が認められればその糖質の吸収障害があると判定される。小腸粘膜生検での酵素活性測定も有用であるが容易でない。米国では、2012年より有償での遺伝子検査が可能となっている(University of Washington Molecular Development Laboratory)が、現在は米国内のみが対象となっている。

治療と予後

治療は、診断が疑われた時点で蔗糖、および麦芽糖のもととなる澱粉の摂取を中止することである。蔗糖はキャベツや白菜などの野菜類にも多く含まれているため、これらの摂取も中止する。乳糖の消化吸収は正常であるため、母乳やミルクは継続し、食事やおやつにはブドウ糖を使用する。澱粉は一度に多量でなければひどい下痢にならないことが多い。欧米ではスクラーゼ製剤であるSucraid®が医薬品として処方され、食事前と食事中に規定量を内服することで蔗糖を摂取しても下痢を防ぐことができるが、本邦では入手不可能である。多くの患児では加齢とともに症状は軽くなることが知られているが、量的負荷が大きいと症状は免れない。

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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