せんてんせいふうしんしょうこうぐん先天性風疹症候群congenital rubella syndrome
小児慢性疾患分類
- 疾患群11
- 神経・筋疾患
- 大分類32
- 先天性感染症
- 細分類89
- 先天性風疹症候群
病気・治療解説
概要
風疹ウイルスに対し免疫のない女性が妊娠初期に風疹ウイルスに感染し、ウイルスが胎児に感染することにより、出生児に先天性心疾患、難聴、白内障などが生じる。これらを総称し先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome:CRS)と呼ぶ。肝脾種、血小板減少、発育障害なども生じる。風疹の流行期が春から初夏であるため、CRS児は秋から冬に生まれることが多い。感染症法(2012年更新)では、CRSは全数報告対象(5類感染症)であり、医師は診断後7日以内に保健所に届け出なければならない。
疫学
日本では1993年を最後に稀となったが、2012年関東や関西を中心に風疹が流行、秋以降、CRSが全国で22人報告された。2013年も全国で20人超の患者発生が推定されている。CRSの発生は母親が顕性感染した妊娠月別のCRS 発生頻度は、妊娠1 カ月で50%以上、2カ月で35%、3カ月で18%、4カ月で8%程度である。成人でも15%程度不顕性感染があるので、母親が無症状でもCRS は発生し得る
病因
原因は、トガウイルス科ルビウイルス属の風疹ウイルス。免疫のない女性が妊娠初期に風疹ウイルスに感染、母体血液ならびに胎盤を通じて胎児にも感染(経胎盤感染)、出生後に症状が明らかとなる
症状
CRS の3 大症状は先天性心疾患(動脈管開存症、心室中隔欠損症など)、感音性難聴、白内障である。先天性心疾患と白内障は妊娠初期3 カ月以内の母親感染で発生する。難聴は妊娠3 カ月以降の感染でも出現し重症であることが多い。他にも網膜症、肝脾腫、血小板減少、糖尿病、発育障害、精神発達遅滞、小眼球など多彩な症状がみられる。確定診断にはウイルス分離よりもウイルス遺伝子RNAを逆転写PCR で増幅・検出する方が感度も良く短時間で同定可能。出生後6 カ月までは高頻度に水晶体(白内障手術)、脳脊髄液、咽頭拭い液、血液などでウイルス遺伝子RNAを検出できる。臍帯血、患児血での風疹IgM 抗体価の上昇も、IgM 抗体は胎盤を通過しないので胎内感染の証拠となる
治療
心疾患は軽度であれば自然治癒もあるが、手術が必要になることが多い。白内障については手術可能になった時点で、濁り部分を摘出して視力の回復を目指す。難聴については乳幼児期での人工内耳の適応を議論するとともに、補聴器装着を考慮する。発症予防が最も重要であり、妊娠する可能性のある女性は予防接種を受けるべきである。過去の風疹罹患歴が不確かな場合はウイルス抗体価の検査を受け必要に応じて予防接種を受ける。予防接種による追加免役の効果が望めるので、抗体価の確認なしで予防接種を受けることは構わない。妊娠可能性の年代の女性は、胎児への感染を防ぐため、妊娠していないことを確かめた上、予防接種を受け、予防接種後2~3カ月間避妊する
小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。
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