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りぽいどふくじんかけいせいしょう
リポイド副腎過形成症Congenital lipoid adrenal hyperplasia

小児慢性疾患分類

疾患群5
内分泌疾患
大分類25
先天性副腎過形成症
細分類50
リポイド副腎過形成症

病気・治療解説

概要

本症は、ステロイドホルモン合成の律速段階にあるコレステロールよ りプレグネノロンヘのステロイド合成過程に関与するコレステロール移送蛋白であるSteroidogenic acute regualtory proteinに異常があるため、副腎及び性腺におけるほとんどすべてのステロイドホルモンが合成できない病態である。そのため出生時より副腎不全症状を呈し、また46、 XYの個体では精巣での男性ホルモン産生障害のため外性器が女性化する。遺伝形式は常染色体性劣性遺伝である。その他、極めてまれにコレステロール側鎖切断酵素(P450scc)の異常によるものもある。

疫学

我が国における先天性副腎過形成症の4.1%を占め比較的日本人に多くみられ約100例弱が報告されている。

病因

コレステロールよりプレグネノロンヘのステロイド合成過程はステロイドホルモン律速段階にあり、ミトコンドリア内膜へのコレステロールの移送とミトコンドリア内での酵素反応が関与する。ミトコンドリア内 での酵素反応にはチトクロームP450scc、アドレノドキシン、アドレノドキシン還元酵素が関与するが、これにコレステロールを供給する役割を担う代謝回転の早い蛋白の異常が本症の病因であることが明らかにさ れた。この蛋白は30Kの蛋白でACTH‐cAMPあるいはLH/FSH‐cAMPに反応して生成される。
現在まで種々のSteroidogenic acute regulatory protein(StAR)遺伝子の異常が同定されている。StAR遺伝子は、染色体の8p11.2に存在し、8kbの長さで7ケのエクソン、6ケのイントロンよりなる。本症で見い出されたStAR遺伝子異常としてエクソン7番目にストップコドンをつくる変異が多い。P450scc異常症は世界で10例以上の報告がある。

症状

本症はステロイドホルモン合成の初期過程が障害され、性腺と副腎がその障害となり、コルチゾール、アルドステロン、性ホルモンすべてが欠乏する。グルココルチコイド、ミネラルコルチコイド欠乏のため、出生時より著しい副腎不全症状(哺乳不良、嘔吐、不活発など塩喪失症状)、体重増加不良などをみる。46、XY個体ではLeydig細胞からテストステロン分泌がないため外陰部は女性型となる。通常精巣下降の障害のため、男児では腹腔内、そ径部、大陰唇に停留する。精巣の構造は正常でgerm cellも認められる。46、XX個体では卵巣での卵胞形成は認められる。しかし、StAR遺伝子異常によっても、正常な男性外性器、精巣機能正常な患者も存在し、この場合にはグルココルチコイド単独欠損症との鑑別が必要である。

診断

典型的には副腎不全症状のほか、皮膚色素沈着を、また性表現型は男女とも女性型を呈する。46、XY個体においては稀であるが、外性器が完全男性型、尿道下裂、停留精巣を示す患者も存在する。ステロイドホルモン合成の初期過程が障害されるため、塩喪失症状、 副腎不全による循環障害、皮膚色素沈着をみる。典型的な46、XY個体では女性の外性器を呈する。精巣は存在し、ミュラー管由来の内性器は存在しない。46、XX個体は正常な外性器、卵巣を有する。二次性徴の発達をみることがある。一方精巣機能の発達はみない。また外性器の男性化はみない。
典型的な症例においては、内分泌学的には、ステロイドホルモン合成の初期過程が障害され、性腺と副腎がその障害となる。コルチゾール、アルドステロン、性ホルモンすべてが欠乏する。その結果、ACTHの高値、レニン活性の高値、尿中C19、C21ステロイド低値、更にはACTH負荷ですべてのステロイドの反応はない。上述したように、稀にコルチゾール欠損、アルドステロン、性ステロイド正常な場合もある。LH‐RH試験でLH/FSH の過剰反応をみる。また低Na、高K血症をみる。家族内発症例がかなりの頻度でみられる。

治療

本症の治療は、急性期の副腎不全の治療とその後の維持療法とに分けられる。急性期の治療はグルココルチコイド及びミネラルコルチコイド欠乏、脱水、酸血症の矯正、低血糖に対して行われる。維持療法として グルココルチコイドの投与量(mg)は体表面積当たりの1日量で、コートリルで乳幼期には30~40、幼児期には25~30、学童期には25~40を投与する。コートンの場合はその1.25倍量投与する。必要量は個人差が大きいので各症例ごとに考慮されるべきである。フロリネフ、食塩 量は塩喪失傾向が強いので通常量より多めに使う。フロリネフは0.1~0.2mg/日を分2で投与する。食塩量は0.1~0.3g/kg/日(最高3g/日)を投与する。男児では異所性精巣摘出を行う。思春期以降は、性ホルモン補充を行い二次性徴を出現させる。女児において二次性徴の出現をみる例もある。

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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