せんてんせいかんせんいしょう先天性肝線維症congenital hepatic fibrosis; CHF
小児慢性疾患分類
- 疾患群12
- 慢性消化器疾患
- 大分類9
- 肝硬変症
- 細分類29
- 先天性肝線維症
病気・治療解説
概要
先天性肝線維症は、病理学的に診断される。一見すると肝硬変に類似しているが、小葉の構築は保たれており、各門脈域間を連結する著明な線維化と肝内胆管の拡張、つぶれた門脈が特徴である。
疫学
約65%に嚢胞性腎疾患を合併することが、文献的なシステマティックレヴューから推測されるが、正確な発症頻度は不明である。ちなみに、先天性肝線維症を最も合併しやすい常染色体劣性多発性嚢胞腎の頻度は出生10,000~40,000に1人とされる。
病因
肝内胆管の発生過程で胆管の原基は胎生8週ごろから門脈域の境界域に1~2層になって発生し、これを胆管板(ductal plate)とよぶ。胎生12週ごろには、ductal plateは改造(ductal plate remodeling)されていくが、先天性肝線維症はこの改造に異常をきたした結果おこる病態と考えられている。
症状
症状は大きく3つに分類される。①門脈圧亢進型:偶然に発見される肝脾腫、原因不明の汎血球減少、吐血など;②胆管炎型:発熱、腹痛、黄疸、この型は多くはCaroli病を合併している;③潜在型:剖検時に偶然発見されたり、嚢胞腎の精査を契機に診断される。
診断
確定診断は、肝生検による病理診断による。前述したような特徴的な肝組織像を呈する。
治療
門脈圧亢進型と胆管炎型が治療の対象となる。各々の症状にたいしての対症療法が基本となる。しかし、巨大脾腫・繰り返す吐血・肝肺症候群などを呈する症例では肝移植を考慮する。
予後
先天性肝線維症と診断された時点で、無症状であっても門脈圧亢進や胆管炎を引き起こす可能性を加味して定期的に診察する。門脈圧亢進型では他臓器の合併症が進行する場合は、肝移植を考慮する。抗生剤に反応しない胆管炎型も肝移植の適応となる。
成人期以降の注意点
肝肺症候群や腎合併症の発症がないか、臨床症状以外に検査所見で注意深くモニターする。少なくとも年に1回の門脈圧亢進症に対する全身評価を行う。①食道静脈瘤の評価、②肝肺症候群の評価、③腎疾患の評価、④神経学的評価など。また、成人では胆管がんの発症リスクが高くなる。
参考文献
乾あやの. 藤澤知雄、友政剛 編. Ductal plate malformation 小児消化器肝臓マニュアル. pp253-257 2003、 東京、診断と治療社
工藤豊一郎. 日本小児栄養消化器肝臓学会 編. Caroli病、先天性肝線維症 小児栄養消化器肝臓病学. pp445-448 2014、 東京、診断と治療社
A Srinath, BL Shneider. Congenital hepatic fibrosis and autosomal recessive polycystic kidney disease. JPGN 2012;54:580-587
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