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かんぜんがたぼうしつちゅうかくけっそんしょう (かんぜんがたしんないまくしょうけっそんしょう)
完全型房室中隔欠損症(完全型心内膜床欠損症)Complete atrioventricular septal defect

小児慢性疾患分類

疾患群4
慢性心疾患
大分類44
完全型房室中隔欠損症
細分類56
完全型房室中隔欠損症(完全型心内膜床欠損症)

病気・治療解説

概念

胎生期の心内膜床形成癒合不全により心房中隔一次孔欠損と心室中隔欠損を伴い、共通房室弁口を形成する。共通前尖の形態により、A, B, Cの3型に分類され(Rastelli分類)、A型では共通前尖が右室側に入らず、腱索は心室中隔や円錐部乳頭筋に結合、B型は腱索が右室心尖部の乳頭筋と結合、C型は共通前尖の腱索は心室中隔と結合せず、右室乳頭筋に結合する(free-floating)。基本病態は心房位と心室位における左右短絡と房室弁の形態異常に基づく種々の程度の房室弁閉鎖不全であり、心室中隔欠損が大きな場合には肺高血圧を合併する。乳児期から重篤な心不全症状を呈し、多汗、多呼吸、哺乳不良、体重増加不良等を認める。乳児期早期にtwo-patch法またはone-patch法による心内修復術を行う。

病因

ダウン症候群の40-45%では先天性心疾患を合併するがそのうち45%は房室中隔欠損である。一方、房室中隔欠損の50%はダウン症候群である。内臓心房錯位症候群にも高率に合併する

疫学

房室中隔欠損は先天性心疾患全体の4-5%を占める。胎児心エコーで診断される疾患としてはもっとも頻度が高く、18%を占める

臨床症状

乳児期から重篤な心不全症状を呈し、多汗、多呼吸、哺乳不良、体重増加不良等を認める。気道感染は重症化しやすく、生命予後を左右することがある。
聴診では、心室中隔欠損による胸骨左縁下部の汎収縮期雑音と肺高血圧を反映した2音肺動脈成分の亢進を認める。房室弁閉鎖不全を反映し、胸骨左縁下部または心尖部の収縮期逆流性雑音を聴取する。肺高血圧が重症の例では心室間短絡による雑音は聴取しがたくなり、房室弁閉鎖不全による雑音のみを聴取することもある。
多量の左右短絡によって重度の肺高血圧を呈し、生後6ヵ月ごろから肺血管閉塞性病変が進行する。肺血管閉塞性病変、左側房室弁閉鎖不全、合併先天性心疾患の有無などが予後を左右する。
胸部エックス線では乳児期から肺うっ血が強く、房室弁閉鎖不全があると心拡大、肺うっ血はさらに高度となる。肺血管閉塞性病変が進行すると末梢肺野は明るくなる。
心電図では左軸偏位、PQ間隔の延長、不完全右脚ブロック、両心肥大を特徴とする。房室弁付着下方偏位(scooping)が強いと刺激伝導路系の後下方への偏位が大きくなり、左軸偏位が強くなる傾向がある。
心エコー図では流出部心室中隔が短縮し、心房中隔下部と心室中隔に欠損を認める。共通前尖の形態によるRastelli分類を診断でき、房室弁閉鎖不全の程度にも評価できる。左室が小さい例では乳頭筋の位置異常、重複房室弁口、左室流出路狭窄、大動脈縮窄などの検索が必要である。
心臓カテーテルで、カテーテルは一次孔欠損を通して容易に左室へ挿入される。肺血圧と体血圧は等しい。肺血管閉塞性病変の進行が疑われた場合は酸素や一酸化窒素の負荷を行い肺血管閉塞性病変の可逆性を評価する。左室造影は診断的価値が高く、正面像でgoose-neck signと呼ばれる特徴的な所見を呈する。また、拡張期に共通房室弁口を認め、収縮期に心室間交通を介して左右短絡を認める。肺静脈造影では心房中隔下部から左右短絡を認める

診断

心電図、心エコー図、左室造影所見は特徴的なため診断に有用である。完全型で一次孔欠損を伴わない場合、またはスリット状の場合は、いわゆる心内膜床欠損型の心室中隔欠損や、心室中隔欠損と僧帽弁裂隙の合併例との鑑別が必要となる。複雑先天性心疾患を伴う場合には、内臓心房錯位症候群を念頭において診断を進める

治療

乳児期早期にtwo-patch法またはone-patch法による心内修復術を行う。 左室低形成、重複弁口、共通房室弁の左側成分が低形成などの例では乳児期早期に肺動脈絞扼術を行った後に心内修復術を行うこともある。パリビズマブによるRSウィルス感染予防も重要である

予後

乳児期早期に心内修復術を行えば一般に予後は良好であるが、房室弁機能異常(閉鎖不全と狭窄)が予後を左右することがある。術後遠隔期に僧帽弁閉鎖不全が悪化して、人口弁置換術が必要になることがある。心内修復術が6カ月以後となった場合には遺残肺高血圧に注意が必要である。また、肺血管閉塞性病変が不可逆性のEisenmenger症候群では外科治療の適応はない

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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