だいどうみゃくしゅくさくしょう大動脈縮窄症Coarctation of the aorta
小児慢性疾患分類
- 疾患群4
- 慢性心疾患
- 大分類56
- 大動脈狭窄症
- 細分類70
- 大動脈縮窄症
病気・治療解説
概要
大動脈峡部と下行大動脈の移行部、すなわち大動脈への動脈管接続部に生じる狭窄。左室の圧負荷をきたす。狭窄が高度だと、乳児期から心不全をきたす。成人期まで無症状のこともあるが、上半身は高血圧となり、脳出血、冠動脈硬化、心筋梗塞などで、寿命は通常より短い。治療と経過観察が必要な疾患である。
病因
動脈管の収縮組織が大動脈内に迷入して存在することが病因と考えられている。発生機序として、胎生期に上行大動脈への血流が減少すると、その結果大動脈峡部の血流が少なくなり、大動脈峡部が細くなる。さらに血流が少なければ、大動脈弓も低形成になる。出生後、動脈管が収縮する。本症では動脈管の収縮組織が大動脈内にまで分布すると考えられ、動脈管組織の収縮により大動脈峡部下端が動脈管側に牽引され、棚状に内腔に突出して狭窄する。大動脈峡部は狭窄前拡張し、限局性の狭窄が発生する
疫学
大動脈縮窄症として、先天性心疾患の約5%を占めると報告されている。大動脈二尖弁の合併がしばしば認められる。Turner症候群(染色体45X)の約30%に合併する
臨床症状
狭窄が高度だと、乳児期から心不全をきたす。成人期まで無症状のこともあるが、上半身は高血圧となり、脳出血、冠動脈硬化、心筋梗塞などの合併症を起こす
診断
[心電図]
左室肥大
[胸部エックス線]
心拡大を認めることがある。
[心エコー]
大動脈の狭窄が描出される。縮窄部の流速が速くなり、乱流を認める。
[心カテーテル、造影検査]
大動脈の狭窄が描出される。狭窄部で圧差を認める。
【その他の画像診断】
CTおよびMRIによる検査にても狭窄を認め、診断可能である。
上記検査所見が認められる。確定診断には、心エコー、大動脈造影、CT、MRIのいずれかで大動脈縮窄を証明する
治療
大動脈縮窄部を切除して端々吻合する手術を行う。有症状の場合には内科的対症療法を行い、診断後早期に手術を実施する。無症状の場合には、3歳前後、遅くても5歳までに手術を行う。3歳以前の手術では遠隔期の再狭窄が、3歳以降の手術では遠隔期の高血圧が起こりやすく、いずれの場合にも術後内科的管理・治療を行い、必要に応じてカテーテル治療ないし再手術を実施する。カテーテル治療は術後再狭窄に対する治療として有効である。未手術例に対してカテーテル治療が行われることもあるが、約40%の症例で術後に動脈瘤を発生するとの報告があり、適応は確立していない
予後
心不全症状を呈する乳児では、未手術では1歳以前に死亡することが多い。手術により予後は劇的に改善されるが、3歳以前の手術例では遠隔期の再狭窄が、3歳以降の手術例では遠隔期の高血圧が起こりやすく、いずれの場合にも生涯的な内科的管理・治療(必要に応じてカテーテル治療ないし再手術)を要する。手術年齢が5歳以上、特に成人に達している場合、縮窄が解除されても術後高血圧は正常化しないため、生涯的に内科治療が必要。成人期まで無症状の例でも、未手術の場合、上半身は高血圧となり、脳出血、大動脈瘤・破裂、冠動脈硬化、心筋梗塞、心不全などを発症し、平均寿命は約35歳と報告されている
小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。
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