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まんせいじんふぜん (きゅうせいにょうさいかんえしまたはじんきょけつによるものにかぎる。)
慢性腎不全(急性尿細管壊死または腎虚血によるものに限る。)Chronic renal failure due to acute tubular necrosis or renal ischemias

小児慢性疾患分類

疾患群2
慢性腎疾患
大分類16
慢性腎不全
細分類37
慢性腎不全(急性尿細管壊死または腎虚血によるものに 限る。)

病気・治療解説

概要

急性腎不全(acute renal failure: ARF)は,血清クレァチニン(Cr)値や血液尿素窒素(BUN)値の上昇で示される腎機能の急速な低下で診断されるもので,疾患概念としては,数日から数週間の経過で,急速に腎機能が低下して蛋白の最終産物をはじめとした老廃物が体内に蓄積した結果,高窒素血症,溢水・高カリウム血症などの水電解質異常,代謝性アシドーシスなどの酸塩基平衡の障害が出現する症候群とされてきた。ARFの診断基準としては,「①血清Cr値が2.0~2.5mg/dL以上に急速に上昇,②基礎に腎機能低下がある場合には,血清Cr値が前値の50%以上上昇,③血清Cr値が0.5mg/dL/日,もしくはBUNが10mg/dL/日以上の速度で上昇,のいずれかに該当するもの」と示されてきた(1)。しかし,ARFでは,腎機能の低下の程度や速度についての世界標準の診断基準は,これまで確立されていなかった。そのため,ARFの死亡率が減少せず,50%以上の状態が続いていた。ARFの高い死亡率を改善するためには,診断基準を世界的に統一し,エビデンスを共有することが必要であると考えられた。また,従来臨床上ほとんど問題視されなかったわずかな血清Cr値の上昇が,患者の死亡に大きく寄与することがメタアナリシスでも検証され,これまでARFに陥ってから血液浄化療法を行う対象を,生命予後に直接影響する予後不良の疾患として,より早期あるいは軽症の段階から,積極的に診断・治療介入することが必要となり,従来のARFから急性腎障害(acute kidney injury:AKI)へ,より包括的に急激な腎機能低下をきたす病態が提唱されるに至った。
しかし,小児AKIの死亡率は,近年の腎代替療法の進歩にもかかわらず,35~73%と不良である。特に,敗血症合併例,心疾患手術例,悪性腫瘍合併例,そして多臓器不全例の生命予後は不良とされている。また,AKIから回復してもCKDに移行する確率は新生児から思春期までの報告で40~60%に達する。

病因

小児のAKIの頻度は対象年齢によって大きな差がみられる。AKIの一般小児における頻度は,人口100万人当たり8人であり,これは成人の頻度の約1/5と少ない,また,小児の入院症例の5%,ICU症例の30%で,その頻度は近年上昇している。
新生児期では,重症仮死,呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome: RDS)に伴う腎血流の低下(腎虚血)や低酸素血症に起因する腎前性が多く,その他では腎性の皮質壊死,先天性腎尿路奇形,腎静脈血栓症が多い。乳児期では,HUSなどの腎性の占める割合が多くなり,学童期以降には,RPGNなどによるAKIが問題となる。近年では,乳児嘔吐下痢症後(特に,ロタ腸炎)の腎後性の報告も散見される。一方,最近の医療の進歩により,先天性心疾患の開心術後や骨髄移植・臓器移植における敗血症・出血,そして悪性腫瘍の化学療法による多臓器不全に伴うものなどが増加している。そのため,骨髄・肝臓・心臓移植,極低体重児医療,先天性心疾患手術を行う三次医療施設では,発生頻度が高くなっている。
小児AKIの原因疾患別頻度は,アメリカの小児医療専門施設からの報告では,①腎虚血(21%),②腎毒性薬剤(16%),③敗血症(11%)となっている(2)。一方,アジア諸国のトルコ小児AKIグループの報告では,①虚血(28%),②敗血症(18.2%),③急性胃腸炎以外の脱水(14.8%)となっており,若干の相違がある(3)。また,新生児期とそれ以降では,原因に大きな変化がみられる。
小児急性腎不全の原因(病因的分類)を表1に,原疾患を表2に示す(4)。

表1 小児急性腎不全の原因(病因的分類)

表2 乳児期以降の小児急性腎不全の原疾患と頻度

診断

急性腎不全の原因診断が重要である。小児の腎機能評価はCKD診療ガイドライン2013に準ずる(5)。

治療

AKIの原因によらずいったん不可逆性の腎機能障害に陥れば,慢性腎不全の治療に準じて診療を行う。すなわち,食事療法や各症状にあわせた対症療法が主体となる。電解質異常に対するカリウムやリンの吸着薬投与,代謝性アシドーシスに対する重曹投与,腎性貧血に対するエリスロポエチン注射や鉄剤投与,腎性骨症および二次性副甲状腺機能亢進症に対する活性型ビタミンD製剤の投与などを行う。さらに体液量増加に対しては利尿剤,高血圧に対しては降圧薬を用いる。また,腎機能保護を目的としてACE阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬などを用いられるが,小児における有効性のエビデンスは無い。

参考文献

1) 菱田明. AKI・急性腎不全の原因,診断の進め方.日腎会誌52:529-533, 2010
2) Andreoli SP. Acute kidney injury in children. Pediatr Nephrol 24:253-263, 2009
3) Duzova A, Bakkaloglu A, Kalyoncu M, et al; Turkish Society for Pediatric Nephrology Acute Kidney Injury Study Group. Etiology and outcome of acute kidney injury in children. Pediatr Nephrol 25:1453-1461, 2010
4) Flynn JT. Choice of dialysis modality for management of pediatric acute renal failure. Pediatr Nephrol. 2002;17: 61-9.
5) 小児CKDの診断:日本腎臓学会(編), CKD診療ガイドライン2013. pp163-177; 東京医学社, 東京, 2013
6)Nagai T, Uemura O, Ishikura K, et al. Creatinine-based equations to estimate glomerular filtration rate in Japanese children aged between 2 and 11 years old with chronic kidney disease. Clin Exp Nephrol 17: 877-81, 2013
7)Uemura O, Nagai T, Ishikura K, et al. Creatinine-based equation to estimate the glomerular filtration rate in Japanese children and adolescents with chronic kidney disease. Clin Exp Nephrol. 2013 [Epub ahead of print]

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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