1. HOME
  2. カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼⅠ欠損症

かるにちんぱるみといるとらんすふぇらーぜわんけっそんしょう
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼⅠ欠損症Carnitine palmitoyl transferase I deficiency

小児慢性疾患分類

疾患群8
先天性代謝異常
大分類3
脂肪酸代謝異常症
細分類41
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼⅠ欠損症

病気・治療解説

概要

カルニチン回路異常症の1つで、フリーカルニチンからアシルカルニチンの生成が障害されるため、血中フリーカルニチンが著増し、総カルニチン量も正常~軽度増加する。これにより長鎖脂肪酸のミトコンドリア内への転送が障害され、脂肪酸代謝が十分行われずにエネルギー産生低下を引き起こす。新生児期発症型はけいれん、意識障害、呼吸障害などで急性発症し、著しい低血糖や高アンモニア血症、肝逸脱酵素の上昇などをきたす。乳児期以降は飢餓時や発熱時に、低ケトン性低血糖症とともにReye様症候群として発症する。急性発症が死亡につながる症例もある(注1, 2)。

疫学

極めて稀な先天代謝異常症であり,本邦での新生児タンデムマス・スクリーニングのパイロット研究結果からは,CPT1欠損症は約300,000出生に対して1例と推定される。

病因

遊離カルニチンからアシルカルニチンの生成が障害されるため,血中遊離カルニチンが著増し,総カルニチン量も正常~軽度増加する.CPT1にはアイソザイムが存在し,欠損酵素は肝臓型の酵素CPT1aであり,骨格筋型CPT1b, 脳型CPT1cの欠損はこれまで知られていない,

症状

新生児期発症型は、けいれん,意識障害,呼吸障害などで急性発症し、著しい低血糖や高アンモニア血症、肝逸脱酵素の上昇などをきたす。乳児期発症型は、飢餓時や発熱時に,低ケトン性低血糖症とともにReye様症候群を呈する。急性発症が死亡につながる症例もある.学童期以降は,低血糖を伴わず,肝腫大や肝機能異常,中性脂肪や遊離脂肪酸高値がみられる場合がある.稀に腎尿細管障害を呈する症例もある。

診断

『診断の手引き』参照

治療

急性期は長鎖脂肪酸の利用障害によるエネルギークライシスとミトコンドリアの2次的機能障害が中心であるため,これらを改善させる治療が必要である。輸液や各種ビタミン剤の投与、高アンモニア血症があればアルギニン、フェニル酪酸ナトリウム、安息香酸ナトリウムなどの投与を行う。
安定期には食事間隔の指導(年齢に応じた空腹許容時間の厳守)、シックデイにおける早期治療介入、高炭水化物(総カロリーの70%程度),低脂肪食(総カロリーの20%以下)などの栄養療法を行う。中鎖脂肪酸はミトコンドリア内への輸送は障害されないため,中鎖トリグリセリド(MCT)オイル,MCTパウダーやMCT強化乳の摂取が推奨される。

予後

一般的に重篤な低血糖発作を起こさなければ、神経学的予後は良好であるとされている。
成人期以降
遅発型も含め,学童期以降の成人期のリスクとして,ダイエット,過度な運動,外科手術,妊娠,出産,飲酒が挙げられるので注意を要する。

参考文献

1) Roe CR,et al: Mitochondrial fatty acid oxidation disoders. The Metabolic and molecular Bases of Inherited disease, 8thed, McGraw-Hill, NY, 2001 p2299,Fig.101-2
2) 重松陽介:タンデムマス診断精度向上・維持, 対象疾患設定に関する研究. 厚生労働省科学研究費補助金「タンデムマス導入による新生児マススクリーニング体制の整備と質的向上に関する研究」/平成23年度総括・分担研究報告書, p49-57, 2012
3) Michael J Bennett, et al. Carnitine Palmitoyltransferase 1A Deficiency. GeneReviews™ [Internet]. Initial Posting: July 27, 2005; Last Update: March 7, 2013.

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

ピックアップ・イベント

ニュース一覧

イベント一覧

この疾患に関するピックアップ記事、イベントはありません

実施中の治験/臨床試験