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カルニチンアシルカルニチントランスロカーゼ欠損症Carnitine-acylcarnitine translocase (CACT) deficiency

小児慢性疾患分類

疾患群8
先天性代謝異常
大分類3
脂肪酸代謝異常症
細分類43
カルニチンアシルカルニチントランスロカーゼ欠損症

病気・治療解説

概要

カルニチン回路異常症の1つで、長鎖アシルカルニチンをミトコンドリア内に取り込んだり、CPT2によって分離された遊離カルニチンをミトコンドリア外に運び出す働きをしているCACTの欠損により、アシルカルニチンは分離されずに利用できず、長鎖脂肪酸のミトコンドリアでの脂肪酸代謝が十分行われずにエネルギー産生低下を引き起こす疾患である。CPT IIとほぼ同じ病態を示す。飢餓時の低血糖と筋力低下がおもな症状である。

疫学

CACT欠損症は約196万人を対象とした同研究では診断された症例はなかった.頻度は不明であり極めて希な疾患である。

病因

CACTは,ミトコンドリア内膜に局在する蛋白であり,アシルカルニチンをミトコンドリア内に,ミトコンドリア内の遊離カルニチンを細胞質に輸送している。SLC25A20遺伝子(3p21.31に局在)に基づきCACT活性が低下し、アシルカルニチンが分離されず,血中遊離カルニチンが低下することにより発症する.

症状

新生児発症型は、けいれん、意識障害、呼吸障害、不整脈などで急性発症し、著しい低血糖や高アンモニア血症、肝逸脱酵素の上昇、高CK血症、心筋症などをきたす。組織学的には骨格筋,心筋,肝臓,腎尿細管の脂肪変性が認められる。CACT欠損症の多くが新生児期発症であるが,発熱,感染症,空腹を契機に乳幼児期に,けいれん,突然死などで急性発症することがある。

診断

『診断の手引き』参照

治療

急性期は長鎖脂肪酸の利用障害によるエネルギークライシスとミトコンドリアの2次的機能障害が中心であるため,これらを改善させる治療が必要である。輸液や各種ビタミン剤の投与、カルニチンの投与(100 mg/kg/day)、高アンモニア血症があればアルギニン、フェニル酪酸ナトリウム、安息香酸ナトリウムなどの投与を行う。
安定期には食事間隔の指導(年齢に応じた空腹許容時間の厳守)、シックデイにおける早期治療介入、高炭水化物(総カロリーの70%程度),低脂肪食(総カロリーの20%以下)などの栄養療法を行う。中鎖脂肪酸はミトコンドリア内への輸送は障害されないため,中鎖トリグリセリド(MCT)オイル,MCTパウダーやMCT強化乳の摂取が推奨される。

予後

新生児期に発症し、心筋障害が急速に進行するものは予後不良である。また、重篤な神経後遺症や突然死の原因にもなる。マス・スクリーニングなどによる早期診断例では早期治療によって比較的良好な経過をたどる場合もある。症例数が少なくはっきりした予後は不明である。

成人期以降

上記治療を継続することである。学童期以降の成人期のリスクとして,ダイエット,過度な運動,外科手術,妊娠,出産,飲酒が挙げられるので注意を要する。

参考文献

1) Roe CR,et al: Mitochondrial fatty acid oxidation disoders. The Metabolic and molecular Bases of Inherited disease, 8thed, McGraw-Hill, NY, 2001 p2299,Fig.101-2
2) 重松陽介:タンデムマス診断精度向上・維持, 対象疾患設定に関する研究. 厚生労働省科学研究費補助金「タンデムマス導入による新生児マススクリーニング体制の整備と質的向上に関する研究」/平成23年度総括・分担研究報告書, p49-57, 2012
3) Rubio-Gozalbo ME, et al: Carnitine-acylcarnitine translocase deficiency. clinical, biochemical and genetic aspects. Mol Aspects Med 25: 521-532, 2004

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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