きかんしかくちょうしょう気管支拡張症bronchiectasis
小児慢性疾患分類
- 疾患群3
- 慢性呼吸器疾患
- 大分類7
- 気管支拡張症
- 細分類9
- 気管支拡張症
病気・治療解説
概念
気管支拡張症は、様々な原因で気管支壁が破壊されて膨隆し、気管支内腔が拡張した状態である。内腔には膿性の痰が充満し、慢性的に炎症が存在するか感染を反復する。副鼻腔炎を合併することが多い。
疫学
小児慢性特定疾患治療研究事業によると、近年の登録数は約80件である
病因
原因として、線毛機能不全症候群(Kartagener症候群を含む)、免疫異常、嚢胞性線維症のような先天性疾患と、中葉症候群、気管支異物の長期嵌入、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、閉塞性細気管支炎、Swyer-James症候群のような後天性疾患とがある
症状
主要症状は慢性的な咳嗽と喀痰である。咳嗽は湿性で運動や深呼吸で容易に誘発される。喀痰は膿性で、増悪時に血液が混入することもある。肺炎を併発しやすい。病変部がびまん性の場合には、息切れや呼吸困難を伴い、ばち状指が認められる。肺聴診では、病変部において呼吸音の減弱や水泡音(coarse crackles)を認める。副鼻腔炎を合併する場合が多く、その場合は慢性的な鼻閉や膿性鼻汁を伴う
診断
胸部単純X線写真では小嚢胞状、円錐状の気管支空気像や気管支壁の肥厚像を認める。周辺に無気肺を伴うことが多い。ただし、肺炎が併発している場合には、気管支拡張所見は不明瞭になる。肺炎を反復する症例では、肺炎軽快後の胸部X線写真の読影が重要である。
気管支壁の観察にはCTが優れている。また、無気肺や周辺の細かな浸潤陰影の把握にも有用である。以前は気管支造影の方が詳細な情報が得られたが、最近はCTで十分である。
気管支ファイバースコピー検査は必須ではないが、限局性の気管支拡張症では、気管支異物、気管支狭窄、気管支腫瘍などの鑑別を行うために行うことが多い。同時に検査と治療を兼ねて痰の吸引を行うこともあるが、効果は一過性である。
喀痰培養を定期的に行い、普段から細菌の種類を把握しておくことは増悪時に有用である。嚢胞状の気管支拡張では、真菌や抗酸菌の可能性も考慮する
治療
胸部理学療法は長期管理の中心であり、毎日行うよう習慣づける。基本的には、早朝空腹時、昼食30分前、就寝前にそれぞれ5分間を目安に、病変部を上にした体位で振動を与え、同時に咳嗽を誘導する。多少の嘔吐を伴う場合があるが、嘔吐によって排痰が促進されることが多いので、嘔吐を理由に以後の理学療法を中止しないよう気をつける。感染増悪時には回数を増やす。
薬物療法の基本は去痰薬と気管支拡張薬であり、鎮咳薬は投与しない。マクロライド系抗菌薬の少量持続投与も行う。それでも感染の管理が困難な場合には、ST合剤に変更する。いずれも長期投与による副作用に注意する。急性増悪時には肺炎球菌やインフルエンザ菌を目標とした抗菌薬を投与する。
病変部が1か所に限定され、しかも進行性であれば病巣を含めた肺葉切除を行うことがある。びまん性の場合には原則として手術適応はない。
管理困難な喀血に対して、気管支動脈造影に続いて塞栓術を行うことがある。効果は一過性であり、緊急避難的な処置と考えるべきである
予後
嚢胞状拡張は不可逆性だが、軽度の円柱状拡張を呈する中葉症候群では、年長児になって軽快することが少なくない。感染増悪の反復をできるだけコントロールすることが呼吸不全への進展を阻止するためにもっとも重要であり、毎日の治療を継続できるかどうかが予後を左右する
文献
1)川崎一輝:気管支拡張症.加藤忠明(監修),新しい小児慢性特定疾患治療研究事業に基づく小児慢性疾患診療マニュアル.診断と治療社,2006,pp.164-166.
2) Stillwell PC: Bronchiectasis. In Light MJ (Ed): Pediatric Pulmonology. American Academy of Pediatrics, 2011, pp.365-375.
小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。
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