じょうせんしょくたいれっせいいでんせいぎょりんせん (どうけしようぎょりんせんをのぞく。)常染色体劣性遺伝性魚鱗癬(道化師様魚鱗癬を除く。)autosomal recessive congenital ichthyosis (excluding harlequin ichthyosis)
小児慢性疾患分類
- 疾患群14
- 皮膚疾患
- 大分類2
- 先天性魚鱗癬
- 細分類3
- 常染色体劣性遺伝性魚鱗癬(道化師様魚鱗癬を除く。)
病気・治療解説
概要
潮紅、紅皮症を伴う重症の先天性魚鱗癬の1つであるが、水疱形成、表皮剥離は伴わない。この群は常染色体劣性遺伝の類似した臨床症状と遺伝子異常を有する疾患をまとめた概念であるため、常染色体劣性遺伝性魚鱗癬と呼ばれるようになった[1][2]。
疫学
常染色体劣性遺伝であり、罹患率は約20-30万人に1人。
病因
本邦では脂質輸送蛋白のATP-binding cassette transporter subfamily A member 12 (ABCA12)の遺伝子に変異がある症例が多いが[3]、transglutaminase 1(TGM1)、ichthyin、arachidonate 12-lipoxygenase R type (ALOX12B)、arachidonate lipoxygenase 3 (ALOXE3)、CYP4F22、NIPAL4などの遺伝子変異例もみられる[2]-[4]。
症状
出生時には、しばしば膜様の厚い角化物質(コロジオン膜)に覆われており、コロジオン児 (collodion baby)と呼ばれる。その後、この膜は1~2日で自然に脱落し、脱落後は全身が細かい白色鱗屑で被われ、全身性びまん性潮紅を呈し、眼瞼や口唇の外反、掌蹠の過角化などを生じる。なお、同様の症状を呈しているが、臨床症状以外に多臓器症状を合併するものは魚鱗癬症候群に分類されるため、鑑別が必要である[1][4]。病理所見では顆粒変性はみられず、過角化以外には特異的な所見は知られていない。
診断
特有の臨床症状、常染色体劣性遺伝性形式と矛盾しない家族歴、他臓器症状を伴う魚鱗癬症候群を否定することにより診断する。
詳細は小児慢性特定疾患『診断の手引き』を参照のこと。
診断手引きはこちら
治療
先天性のため、治療期間は生涯にわたる。プロペト®軟膏や白色ワセリン、ヘパリン類似物質含有軟膏(ヒルドイドソフト®)、尿素などを配合する軟膏やローションを過角化、乾燥部位には塗布する。レチノイド内服(チガソン®)も本症の角質増殖・鱗屑・掌蹠角化のコントロールに有効である。
表皮のバリア機能低下が根底にあり、しばしば皮膚の細菌、真菌、ウイルス二次感染を併発するため、抗生剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤などの内服や外用を適宜おこなう。
予後
臨床症状は終生続くことが多いが、なかには成長と共に軽快するものもみられる。本疾患では表皮バリア機能低下が根底にあり、感染症にかかりやすく体温調節も困難であるため、重症例ではこれらが余命に影響を与えることがある。
参考文献
1)池田志斈:先天性魚鱗癬様紅皮症(CIE)の臨床疫学研究.診断書と調査票の策定. 厚生労働科学研究費補助金. 難治性疾患克服研究事業(代表研究者 岩月啓氏). 稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究.平成20年度総括・分担研究報告書, 100-102, 2009.
2)Oji V, Tadini G, Akiyama M,et al.: Revised nomenclature and classification of inherited ichthyoses: results of the First Ichthyosis Consensus Conference in Sorèze 2009. J Am Acad Dermatol. 63 :607-641, 2010.
3)Sakai K, Akiyama M, Yanagi T, et al: ABCA12 is a major causative gene for non-bullous congenital ichthyosiform erythroderma. J Invest Dermatol. 129: 2306- 2309, 2009.
4)稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究班による2011年最新版.先天性魚鱗癬様紅皮症とその類縁疾患.
小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。
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