じこめんえきせいりんぱぞうしょくしょうこうぐん自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)autoimmune lymphoproliferative syndrome; ALPS
小児慢性疾患分類
- 疾患群10
- 免疫疾患
- 大分類4
- 免疫調節障害
- 細分類33
- 自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)
病気・治療解説
概要
ALPSはアポトーシス(細胞死)の障害によりリンパ球増殖をきたし、リンパ節腫脹や肝脾腫、自己免疫疾患を示す症候群である。FAS依存の細胞死経路にかかわるFAS、FASリガンド、カスペース10の遺伝子異常が認められる。CD3+ TCRαβ+ CD4- CD8- のダブルネガティブT細胞の増加が特色である。
病因
FAS誘導アポトーシスに関与するFAS、FASリガンド、カスペース10の遺伝子異常で発症する。FAS遺伝子異常によるALPSでは、生殖細胞系列の変異で発症するものと体細胞レベルの変異(ダブルネガティブT細胞優位にFAS遺伝子異常がモザイクに存在)で発症するものが知られ、それぞれALPS-FAS、ALPS-sFASと分類される。FASリガンドの異常によるものはALPS-FASL、シグナル伝達に関与するカスペース10の異常によるものはALPS-CASP10、遺伝子変異が同定されていないものはALPS-Uと分類される。いずれの場合も活性化したリンパ球のアポトーシスが誘導されない結果、免疫制御機構が破綻し発症すると考えられている。類縁疾患としてカスペース8欠損症、RAS関連自己免疫性リンパ増殖症候群様疾患(RALD)、Dianzani自己免疫性リンパ増殖症(DALD)が知られている
疫学
患者数は、全世界で400例ほど、本邦で20例程度と推定されている。最近の海外からの報告によると、ALPS-FASの発症年齢は平均2.7歳、50歳までの生存率は〜85%とされている
臨床症状
持続的なリンパ節腫脹、脾腫ならびに肝腫大が特徴的である。血球系細胞に対する自己抗体が産生され、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性好中球減少症がしばしば認められる。その他の自己免疫異常として、腎炎、肝炎、ぶどう膜炎、関節炎などが知られる。自己免疫病態は主として乳児期に目立ち、成長とともに軽快するものが多いとされるが、一部の症例では成人してからも多様な自己免疫疾患の合併が認められる
治療
リンパ球増殖の制御と自己免疫疾患に対する治療が中心となる。血球減少症に対しては、副腎皮質ステロイドや免疫グロブリン大量療法が用いられる。一部の難治例に、シクロスポリンなどの免疫抑制剤、メルカプトプリン水和物などの抗腫瘍薬が試みられてきたが、最近では、ミコフェノール酸モフェチル、ラパマイシンやリツキシマブの投与が有効とされる。脾摘は、敗血症を起こす危険性が高いため、以前と比べ行われなくなっている。根治療法として造血幹細胞移植が考えられるが、加齢とともに症状が軽快することが多いとされ、適応は限られる
合併症
悪性腫瘍が最も重要な合併症である。悪性リンパ腫などのリンパ系の悪性腫瘍の発症頻度が高い
小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。
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