じょうみゃくどうがたしんぼうちゅうかくけっそんしょう静脈洞型心房中隔欠損症Atrial septal defect, sinus venosus type
小児慢性疾患分類
- 疾患群4
- 慢性心疾患
- 大分類43
- 心房中隔欠損症
- 細分類54
- 静脈洞型心房中隔欠損症
病気・治療解説
概要
心房中隔欠損症は左右心房を隔てている心房中隔が欠損している疾患を言う。心房中隔欠損症のうち、卵円窩を含まない欠損で、上大静脈か下大静脈に近い部位の欠損。静脈洞型は上大静脈付近が欠損している上位欠損型、下大静脈付近が欠損している下大静脈型に分類される。男女比は2:1で女性に多く、小児期や若年成人では比較的予後の良い疾患である。肺静脈、特に右肺静脈が右心房に還流することがある。その場合には手術が難しくなることがある。
発生・病因
20体節期に、総心房の屋根上縁の部分が陥凹し、心房内面に鎌状の陵を形成する。これより、一次中隔の形成が始まる。その遊離縁は心内膜床の方向に向き、一次中隔と左右心房によってできた大きな開口部、すなわち一次口を形成する。
一次中隔は、体長10-11mm期に心内膜床と接着し一次口を閉鎖する。一次口閉鎖前に、一次中隔の後上方部に多数の小穿孔ができ、ついで、小穿孔が融合して二次口を形成する。
二次中隔は心内膜床の方向に向い卵円孔を囲み、二次口に重なりこれを閉鎖する。左静脈洞弁は二次中隔の右側に接し、最後にそれと融合する。同様に一次中隔と二次中隔も融合する。
静脈洞が右心房に不完全に吸収されたり、二次中隔の未発生あるいは発生異常によって起こる。
肺静脈、特に右上肺静脈が右心房に還流することがある。
疫学
ASDの中では約5-10%と稀な方である。上大静脈が心房中隔の欠損部に騎乗する上部欠損型が多い
臨床症状
この型はsinus nodeの機能不全や上室性頻脈を伴うことが多い。一般的に小児期は無症状で経過することが多く、心雑音や心電図異常などで健診時に発見されることが多い。しかし加齢とともに心不全症状、不整脈や肺高血圧の症状が出現する。まれに小児期に、心不全や肺高血圧を合併することがある。感染性心内膜炎のリスクは低く、予防内服は不要である。理学所見としては、相対的肺動脈弁狭窄による収縮期駆出性雑音を、胸骨左縁第2肋間に聴取する。二音の固定性分裂を認める。相対的三尖弁狭窄による拡張期ランブルを、胸骨左縁第3から第4肋間に聴取する
診断
治療
手術適応は非可逆な肺高血圧症がなく肺体血流比が2.0以上の時、手術適応がある。手術は幼児期から思春期の間に行うことが多いが、内科的治療に反応しない心不全の乳児例や治療を必要とする年長者も治療の対象となる。ASD単独の手術死亡は1%未満であり、術後の遠隔成績も良好である
予後
肺体血流比が2.0を超える場合は20歳後半より、労作時呼吸困難、動機、息切れ、易疲労感などの有症状者が増える。特に40歳以上では心房細動などの不整脈に伴う動機および肺高血圧、僧帽弁閉鎖不全そして三尖弁閉鎖不全などによるうっ血性心不全症状が出現するようになる。なかでも肺高血圧症を有する例では、容量負荷の経年的変化よりも早期に心不全症状が出現し、その程度も重傷である。成人になってから手術を受けた例は、右心および左心に機能不全を残し、軽度の愁訴を残すことがある。また、高齢者では手術死亡例もある
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