だいどうみゃくはいどうみゃくそう大動脈肺動脈窓Aorto-pulmonary window
小児慢性疾患分類
- 疾患群4
- 慢性心疾患
- 大分類40
- 大動脈肺動脈窓
- 細分類49
- 大動脈肺動脈窓
病気・治療解説
概要
上行大動脈の左側と肺動脈の右側との間に索状あるいは窓状の交通がある疾患である。この交通孔を介して、大動脈から肺動脈へ短絡がみられる。
本症は、1830年に初めてElliotsonにより記載され、1952年にはGrossが手術を施行した。
大動脈肺動脈窓は、大動脈と肺動脈の半月弁が解剖学的にも機能的にも完全に分離している。Conus septumが存在し、総動脈管残遺症とは異なっている。交通孔の位置からtypeI:近位欠損型、typeII:遠位欠損型、typeIII:全欠損型に分類される。約半数の例が、動脈管開存症、心室中隔欠損症、大動脈弓離断症、大動脈縮窄症、Fallot四徴症、冠動脈起始異常などを合併する。心不全に対して利尿薬と血管拡張薬を中心にした内科治療を行い、手術までの間全身状態の改善に努める。しかし、ほとんどの例は心不全が強く、乳児期早期の手術治療を必要とする。
病因
総動脈幹から大動脈と肺動脈が分割する過程の異常により、上行大動脈の左側壁と主肺動脈の右側壁との間に交通が残ったものである
疫学
全先天性心疾患の1.5%と比較的まれな疾患である
臨床症状
合併奇形のない大動脈肺動脈窓では臨床症状は、中等度以上の動脈管開存症や心室中隔欠損症に類似する。左-右短絡量の増加および、肺高血圧を伴うと、新生児期および乳児期早期に発症と罹病をきたし、重篤な症状を呈する。すなわち乳児期早期から、多呼吸、哺乳困難、体重増加不良、肝腫大、乏尿など心不全症状がみられる。呼吸器感染の易罹患性がある。幼児や年長児で、肺高血圧が高度となり肺血管床に不可逆的な変化がおこってしまうとチアノーゼが常在する。労作時の呼吸困難、息切れなどがみられる。本症に他の心奇形を合併すると、症状は合併した心奇形の病態による修飾が加わりさらに重篤な状態となる
診断
聴診では、肺高血圧を伴うと第II音は亢進する。収縮期雑音と拡張期雑音がいずれも短くきかれる。肺高血圧を伴わない短絡の少ない例では、連続性雑音を聴取することがある。胸部エックス線像は、心拡大および肺血管陰影の増強がみられる。心電図所見は、乳幼児期には、QRS平均電気軸は右軸を示すことが多い。ほかの左-右短絡疾患にみられるように、右室肥大、両室肥大、左室肥大を示すものさまざまである。
心エコー図では、多くの例は心室中隔欠損はなく、左室から大動脈の起始を描出できる。正常の大血管関係の大動脈、肺動脈およびそれぞれの弁が記録され、総動脈管症は否定される。大血管の弁の位置から端子を上方に操作すれば欠損孔も描出できる。
心カテーテル検査で、カテーテルが主肺動脈から上行大動脈へカテーテルが抜けることがある
治療
心不全に対して利尿薬と血管拡張薬を中心にした内科治療を行い、手術までの間全身状態の改善に努める。しかし、ほとんどの例は心不全が強く、早期の手術治療を必要とする。手術にはパッチで交通孔を閉鎖する方法と、大動脈肺動脈窓を切離し、自己組織のみで大動脈、肺動脈の再建を行う術式とがある。小さな大動脈肺動脈窓に対するカテーテル治療の報告がみられる
予後
合併奇形のない大動脈肺動脈窓では、短絡量が少なく、肺高血圧を呈さない限り成人例の報告が散見される。成人期に達した肺高血圧が高度な例では、チアノーゼが常在し、喀血などをみる。多くの例では乳幼児期早期の閉鎖術が必要となる。大動脈離断を伴う例では、手術以外に有効な手段がない。一期的手術の成功例の報告がみられる。術直後の肺高血圧crisisや肺高血圧の残存、術後の大動脈あるいは肺動脈切開による狭窄出現の有無が問題となる
小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。
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