1. HOME
  2. 前眼部形成異常

ぜんがんぶけいせいいじょう
前眼部形成異常anterior ocular segment dystrophy

指定難病328

前眼部形成異常

ピックアップ・イベント

ニュース一覧

イベント一覧

この疾患に関するピックアップ記事、イベントはありません

実施中の治験/臨床試験

検索結果は見つかりませんでした。

クローリングニュース

病気・治療解説

概要

眼球の前半分の構造、いわゆる「黒目」や「瞳」を構成する角膜・虹彩・隅角などの組織を前眼部と総称します。前眼部形成異常は、前眼部が作られる発生の途中の異常により、生まれたときから角膜の濁りを伴う病気です(図2)。濁りの程度には幅があり、ほとんど角膜の濁りが目立たない軽い場合から角膜全体が真っ白に濁っている場合まで様々です。障害の場所と程度の違いに応じて病名がつけられており、図3にその中の一部を示します。代表的な病気としては、Rieger異常は虹彩の一部が角膜とくっついているもの、Peters異常は角膜の後面が欠損して主に中央部が濁っているもの、強膜化角膜は角膜の大部分または全部が白目の組織である強膜におおわれるもの、前眼部ぶどう腫は角膜全体が薄くなり、角膜が前の方に突出したもので、それぞれの病気にも軽いものから重症度の高いものまで幅があります。いずれも角膜の濁りのために、視力の発達が妨げられてしまう病気です。
前眼部形成異常は片眼のことも両眼のこともありますが、両眼の場合が多く、全体の約3/4程度を占めます。両眼の場合は、右眼と左眼で障害の程度に違いがみられることもよくあります。


図2:前眼部形成異常

図3

罹患数

角膜の濁りを伴う前眼部形成異常の発症頻度は、出生12,000-15,000人に1人と言われています。男女の差はありません。2009年に行いました全国調査では、前眼部形成異常220眼のうち、Peters異常が160眼(73%)と多く、前眼部ぶどう腫が25眼(11%)、Rieger異常が17眼(8%)、強膜化角膜が14眼(6%)という結果でした。

疫学

一部で遺伝が関係する場合があると考えられていますが、多くの場合に遺伝性はみられません。また今のところ、前眼部形成異常をおこすリスクになるようなことは、見つかっていません。

原因

前眼部の発生は、胎生5週から胎生8週にかけて行われます。この短い期間に前眼部の角膜から虹彩、隅角、水晶体などの組織が一連の流れで形成されていきます。各々の組織を構成する細胞の種類、由来も様々であるため、この時期に生じる発生の異常は様々な形で表れます。前眼部形成異常といっても、ほとんど角膜の濁りを伴わない程度の軽いものから、角膜が真っ白に濁ってしまうような非常に程度の強いものまで幅広いです。

遺伝

親族に同じ病気の方のいない遺伝性のない患者さんが多いですが、 常染色体劣性遺伝 または 常染色体優性遺伝 と考えられる患者さんもみられます。
常染色体劣性の遺伝のしかたは、両親それぞれから病気を起こす遺伝子を受けつぐ遺伝形式です。両親に同じ病気が認められず、兄弟姉妹に同じ病気の患者さんがいる場合にはこの形式の遺伝のしかたが疑われます。
常染色体優性遺伝は、両親からうけとった遺伝子のどちらかひとつに病気を起こす遺伝子を受けつぐ遺伝形式です。親子でおなじ病気があるときに疑われます。疾患をもつかたの子供にも、おなじ遺伝子の変化が伝わる確率は50%となります。

症状

角膜の濁りによって片眼または両眼の視力の障害、視機能の発達異常をもたらします。また角膜の濁りのために、まぶしがることが多くみられます。視力の障害には、角膜の濁りそのものによる要因と、角膜の濁りのために視力が育たない弱視の要因が重なっています。角膜の濁りが強い場合には、眼鏡による視力矯正は難しいことがほとんどです。幼児期から学童期あるいは成人後に白内障や緑内障などの目の中の異常、疾患を合併することがあり、この場合には更に視力障害が進行することがあります。
また20-30% の患者さんで、全身の合併症を伴うことがあります。同じ時期に発生する臓器の異常を伴うことがあり、歯の発生異常、顔の骨の発生異常、難聴、精神発達遅延や全身的な多発異常を伴うことがあります。

治療法

Peters異常や強膜化角膜などの重症例には、角膜移植術が行われることがあります。ただし、乳幼児の角膜移植は技術的に難しく、角膜移植を行っても視力の成長を促すことが難しいのが現状です。また手術後に白内障、緑内障、移植片拒絶反応などの合併症が生じやすく、角膜移植後の 予後 はあまり良くないため日本ではほとんど角膜移植は行われていません。
前部ぶどう腫では、視力の発達は望めませんが、眼球が突出して薄い角膜に穴があいてしまうことがあり、安全面、整容面から眼球を摘出する手術を行うことがあります。
保存的に経過をみる例では、乳幼児から学童期にかけては視覚リハビリテーションとともに可能であれば弱視の治療が行われます。

経過

Peters異常では成長に伴って角膜の濁りは軽くなることが多いですが、強膜化角膜、前部ぶどう腫では濁りの変化はほとんどみられません。いずれの場合も濁りによる弱視がおこりますので、視力の発達は不良で、幼少時より片眼または両眼の中等度から高度の視力低下(矯正視力で35% が0.1以下、75% が0.4以下)を認め、両眼性の場合では大半が視覚障害児となります。Peters異常では6割以上が矯正視力0.1未満、4割以上が矯正視力0.01未満と重度の視覚障害を生じる場合が多く、強膜化角膜と前部ぶどう腫ではほぼ全例が矯正視力0.01未満と不良です。
前眼部形成異常は、学童期から思春期にかけて1/3以上の症例で白内障、緑内障などを合併し、治療がなされない場合には失明することもあります。視機能の維持のためにも生涯にわたって緑内障の治療、眼圧の管理を行う必要があります。治療は点眼での治療が中心になりますが、白内障や緑内障の手術が必要になることもあります。角膜の濁りのため、手術治療は通常より難しく、手術の際には長期に療養を必要とすることがあります。またこれらの合併症によって視覚障害が増悪した場合には、社会適応や就労のための視覚リハビリテーションや機能訓練を必要とすることがあります。

患者さんに知って欲しいこと

片眼だけの障害の場合は、反対眼の視力発達には問題がないため、通常と変わらない日常生活を送ることができます。片眼が見えづらいことに対する配慮は必要ですが、学校生活もほとんど問題なく送ることができます。
両眼の障害の場合は、障害の程度により視機能に配慮した生活を送る必要があります。視覚障害の程度や将来生じうる合併症を考えた上で、視覚障害児に対する特別支援学校の援助や視覚リハビリテーション、機能訓練を受けていく必要があります。
また一部の方で角膜が薄くなっているような場合は、日頃より眼をぶつけたり、こすったりしないよう保護する必要があります。

※難病情報センターhttp://www.nanbyou.or.jpより、許可をいただき掲載しております。