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無虹彩症

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病気・治療解説

概要

無虹彩症(図1)は目の虹彩(カメラでは絞りに相当する光量を調節する部分)が生まれつきうまくできなかった状態です。PAX6という目や脳がお母さんのおなかの中で作られる過程の中で働く重要な遺伝子が、2つあるうち一つが異常になるために起こります。また中心窩という 網膜 の中心部( 黄斑 部)がうまくできない( 黄斑 低形成と言います。図2)ことが多く、視力は0.2前後のことが多いです。また白内障や角膜上皮細胞という黒目の表面の細胞が高中年期に足りなくなり代わりに結膜上皮細胞と言う白目の上皮細胞が黒目を覆う状態(角膜輪部疲弊症と言います。図3)になることがあります。また虹彩が隅角という目の中の水(房水と言います)が出て行く部位に癒着しやすいため眼圧が上がって緑内障となることもあります。無虹彩症の患者さまの中にはウイルムス腫瘍という小児期の腎臓の癌や泌尿生殖発育不全や発達遅滞を伴うことがあり、その場合は11番染色体の短椀の13という領域の欠失が原因であることが多く、11p13欠失症候群やWAGR症候群と呼ばれています。無虹彩症のうち13%ほどが11p13欠失症候群によるものとされています。

罹患数

10万人に1人程度とされています。

疫学

2つのPAX6遺伝子のうち1つが異常な場合におこります。PAX6遺伝子はとても重要な遺伝子ですので、2つとも異常になると生まれてくることができない(胎生致死と言います。)と言われています。そのため、無虹彩症の患者様でPAX6遺伝子が2つとも異常となることはほとんどありません。

原因

2つのPAX6遺伝子のうち1つが異常となります。遺伝子異常によって正常に働く遺伝子の量が半分となり、半分だと虹彩の細胞、網膜中心部の細胞、角膜上皮細胞、水晶体の細胞をうまく作るのにはちょっと足りないために起こると考えられています。専門的な用語ですが、この半分だと遺伝子が少し足りないために異常が起こる現象のことをハプロ不全と言います。多くの遺伝子では半分の量で十分なのですが、PAX6遺伝子を含むいくつかの重要な遺伝子では細胞によっては半分では少し足りないために異常が起こると考えられています。

遺伝

常染色体優性遺伝 形式で遺伝します。そのため男女で発症率に差はなく、また親から子に約1/2の確率で遺伝します。

症状

虹彩がないための症状として眩しさを感じます。また黄班低形成や白内障のため視力は0.2前後となります。また生まれつき視力が悪いため眼振といって目が小刻みに振幅する状態や斜視があることが多いです。また緑内障を合併しやすく、視野や視力が障害される場合があります。また成人期以降に角膜輪部疲弊症となった場合には視力がさらに低下します。

治療法

虹彩がないことによる眩しさの症状に対しては遮光眼鏡や虹彩付きコンタクトレンズ(図4)を使用します。黄班低形成や眼振については残念ながら現時点で効果的な治療法がありません。白内障に対しては白内障手術を行います。緑内障に対しては最初は点眼治療を行いますが、点眼治療で効果が得られない場合には手術を行います。緑内障手術は隅角という目の中の水の出口の状態に応じて隅角切開術、トラベクロトミー、トラベクレクトミーなどから最も適切なものを選択されますが、これらを行っても効果がない場合にはインプラント手術(図5)と呼ばれる、目の中の液体を目の外に流すための人工のチューブを目に取り付ける手術が行われます。それでも効果がない場合には最終手段として、毛様体という目の中の水を作る場所を破壊する毛様体破壊術という手術が行われます。角膜輪部疲弊症に対しては角膜移植の一つである輪部移植術を行います。この場合、他人の細胞を移植することになりますので、生涯にわたってステロイド剤などの免疫力を抑える薬剤を使用する必要があります。

経過

幼少時は黄班低形成と眼振のために0.2前後の低視力と眩しさが主症状となります。成人期以降には緑内障の合併と角膜輪部疲弊症の発生が視力や視野を障害します。特に緑内障は視神経を障害し、視神経は再生能力がほとんどありませんので進行してしまうと元には戻りません。定期検査と適切なタイミングで治療することがとても大切です。

患者さんに知って欲しいこと

日常生活で特に注意することはありませんが、成人期以降に糖尿病になりやすいという報告がありますので、血糖値を管理する必要がある場合があります。

図の説明


図1. 無虹彩症の前眼部写真


図2. 黄班低形成の眼底写真(上)と光干渉断層計の写真(下)

図3. 角膜輪部疲弊症となった無虹彩症の前眼部写真

図4. 虹彩付きコンタクトレンズの外観(株式会社シード提供)

図5. チューブインプラント(BAERVELDT® Glaucoma Implants )の外観

※ 難病情報センター(http://www.nanbyou.or.jp/)より、許可をいただき掲載しております。