えかるでぃ・ぐてぃえーるしょうこうぐんエカルディ・グティエール(Aicardi-Goutieres)症候群Aicardi-Goutieres syndrome
小児慢性疾患分類
- 疾患群11
- 神経・筋疾患
- 大分類33
- エカルディ・グティエール(Aicardi-Goutieres)症候群
- 細分類92
- エカルディ・グティエール(Aicardi-Goutieres)症候群
病気・治療解説
概念
Aicardi-Goutières症候群(AGS)は重度心身障害をきたす早期発症型の脳症で、頭蓋内石灰化病変と幼少期の慢性的な髄液細胞数・髄液インターフェロン-α・髄液ネオプテリンの増加を特徴とする。出生時より神経学的異常、肝脾腫、肝逸脱酵素の上昇、血小板減少といった先天感染症(TORCH症候群)類似の病像を示すこともあるが、多くの患者では正常発達の期間の後に顕在化するなど、その発症時期は様々である。臨床症状は易刺激性、間欠的な無菌性発熱、頭位成長の低下、発達退行などに特徴づけられる、亜急性発症の重症脳症の経過をとる。約4割の患者で手指、足趾、耳などに凍瘡様の皮膚病変を伴う。近年ではより軽症な非典型例が存在することが明らかになってきている。疾患背景として自己免疫性機序が考えられており、次第にAGS関連遺伝子群の異常は臨床的に幅広いスペクトラム障害であると考えられるようになってきている。
疫学
国内での患者数は不明であるが、約100名前後と推定される。
(難治性疾患研究班(研究奨励分野)の平成23年度推計による。)
病因
AGS関連遺伝子のいずれかの異常による単一遺伝子性の自己免疫疾患と考えられている。AGS関連遺伝子として本概要作成時点でTREX1,RNASEH2A,RNASEH2B,RNASEH1C,SAMHD1,ADAR,IFIH1の7遺伝子が報告されている。常染色体劣性遺伝形式が主であるが、常染色体優性遺伝形式での伝達も報告されている。
症状
古典的には神経学的異常、肝脾腫、肝逸脱酵素の上昇、血小板減少といった先天感染症(TORCH症候群)類似の臨床像を示すか、新生児期から生後早期に易刺激性、間欠的な無菌性発熱、頭位成長の低下、発達退行を中心とした進行性の経過をとる重症脳症の臨床像を示し、重度心身障害をきたす。臨床検査上は、頭蓋内石灰化病変と慢性的な髄液細胞数・髄液インターフェロン-α・髄液ネオプテリンの増加を特徴とするが、後者がみられるのは生後数年以内のみであることが多い。血小板減少、肝脾腫、肝逸脱酵素上昇、間欠的発熱などから不明熱として精査を受けることが多いが、感染指標には基本的には異常がない。IgM、IgGの上昇と補体の低下も報告されている。診断を支持する他の所見として、手指・足趾・耳などの凍瘡様の皮膚病変が4割程度の患者で認められる。全身性ループスエリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患の合併がときに認められる。
治療
治療は現時点では対症療法にとどまり、神経症状に対してはリハビリテーションや医療的ケアの対象となる。また炎症症状や合併する自己免疫性疾患に対しては免疫抑制療法や免疫修飾療法が有効な可能性がある。
予後
典型的には生後数年以内に死亡するとされるが、近年では軽症例の報告が増えており、この限りではない。
参考文献
(1) “Aicardi-Goutières Syndrome” GeneReviews [Internet].
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1475/
(2) “Assessment of interferon-related biomarkers in Aicardi-Goutières syndrome associated with mutations in TREX1, RNASEH2A, RNASEH2B, RNASEH2C, SAMHD1, and ADAR: a case-control study.” Lancet Neurol 2013 Dec;12(12):1159-69. doi: 10.1016/S1474-4422(13)70258-8.
(3) “A nationwide survey of Aicardi-Goutieres syndrome patients identifies a strong association between dominant TREX1 mutations and chilblain lesions: Japanese cohort study.” Rheumatology (Oxford) 2013 Dec 3. [Epub ahead of print]
小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。
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