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きゅうせいかんふぜん (こんすいがた)
急性肝不全(昏睡型)Acute Liver Failure; hepatic coma

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病気・治療解説

概念

肝細胞の急速な壊死あるいは代謝機能の障害により肝機能が高度に低下した状態であり、重篤化とともに凝固障害や意識障害をきたす。本邦では厚生労働科学研究「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班(持田班)の診断基準が用いられている。すなわち急性肝不全を
・正常肝ないし肝機能が正常と考えられる肝に
・肝障害が生じ初発症状出現から8週以内に
・高度の肝機能障害に基ついてプロトロンビン時間が40%以下ないしはINR値1.5以上を示すもの
と定義している。このうち肝性昏睡 II 度以上の肝性脳症を呈するものが「昏睡型」である。
しかし小児、ことに乳児の肝性脳症は観察によって判定することが容易でない。近年の欧米の小児のガイドラインでは予後を解析し、INR値2.0以上であれば意識状態によらず昏睡型と同等として扱っている。

疫学

2011年に日本小児肝臓研究会が行った全国調査では、15歳以下の昏睡型150例が収集され、調査1年当たり10例の登録数であった。実数はこれよりは多いと推定できる。男女比は1:1であった。

病因

小児の急性肝不全は大別して成因不明のもの、ウイルス感染症によるもの、代謝異常によるもの、免疫異常が関与するもの、循環障害、薬剤性、その他が挙げられる。半数以上は成因不明と分類される。ウイルス感染を契機とする例が目立つが同定は困難なことが多い。
新生児では単純ヘルペスウイルス、乳幼児ではEBウイルスの感染で血球貪食症候群ないし血球貪食性リンパ組織球症とともに急性肝不全をきたすことがある。
代謝異常としては尿素サイクル異常症、シトリン欠損症、ミトコンドリア異常症および関連疾患、ガラクトース血症、チロシン血症など、年長児ではウィルソン(Wilson)病など、多彩な疾患で急性肝不全をきたすことが知られている。
免疫異常が関与すると推定されるものには新生児ヘモクロマトーシス、自己免疫性肝炎、血球貪食性リンパ組織球症などで急性肝不全をきたした場合が挙げられる。
循環障害としては左心低形成など低心拍出量の先天性心疾患、重症新生児仮死が急性肝不全に至ることがある。
欧米で多いアセトアミノフェンによる急性肝不全はわが国の小児では少ない。
ほか、ダウン(Down)症候群に随伴する一過性骨髄異常増殖症と肝線維症が急性肝不全に至ることがある。

症状

黄疸、活気不良、食欲低下、発熱などを契機に血液検査を受け、高度の肝逸脱酵素上昇をみて凝固異常を精査され診断される例が多い。初期にはさほど活気や食欲が低下しない例もあり、尿色が濃い、便色が白っぽいなどの徴候にも注意を払う。
理学所見では初期に肝腫大をみる例が多く、球結膜の黄染、右季肋部の叩打痛などに注意を払う。顕性の出血や点状出血に必ずしも遭遇しないが、採血部位の止血困難や血腫は手がかりになることがある。
進行とともに腫大していた肝は萎縮し、腹水がみられるようになる。意識障害は乳児で「あやしても笑わない」「母親と視線が合わない」年長児で「いつもよりおとなしい」「見当識障害がある」などで気付かれやすい。

診断

正常肝ないし肝予備能が正常と考えられる肝に肝障害が生じ,初発症状出現から8 週以内に,高度の肝機能障害に基づいてプロトロンビン時間が40% 以下ないしはINR 値1.5 以上を示し、小児肝性昏睡II度以上を呈するものが該当する。
肝障害の病因検索を進める必要がある。単純ヘルペスウイルス、B型肝炎ウイルスなどは治療薬がある点で重要である。ほか検査項目はなるべく「診断の手引き」に列挙したが、病因は多岐にわたるため個々の詳細は省略する。
肝不全の進行の評価には以下のような多数の指標を参照する。

<血液検査>
肝逸脱酵素、γ-GT、総および直接ビリルビン、総胆汁酸、血漿アンモニア、プロトロンビン時間(PT%ないしINR)、血小板数などを追跡する。肝逸脱酵素の急速な低下をみた際は、流出源の枯渇か、炎症の鎮静化かを鑑別する必要がある。グルクロン酸抱合能の指標として直接ビリルビン/総ビリルビン比(D/T比)、尿素サイクルの指標として尿素窒素(UN)および尿酸(UA)、肝再生の指標としてAFPなどを参照する。

<超音波検査>
しばしば門脈周囲にはperiportal collarがみられ、肝実質エコーは粗造になっていく。肝萎縮をきたすと触診で肝を触れにくくなるとともに、超音波画像でも縮小が観察される。大きさだけでなく、門脈臍部を確認できるプローブ位置が心窩部から右へと移動して行くことも肝萎縮の所見である。門脈血流は減少し鋸歯状になり、次いで逆流することがある。代わって肝動脈血流が目立つようになる。

<CT検査>
肝CTで体積測定を行うとともに、脳浮腫の出現に備えて頭部CTでの評価も重要である。

<脳波>
血液浄化療法に入ると鎮静を要し昏睡の評価が困難になるため重要な指標である。徐波、三相波の出現に注意する。

治療

詳細は参考文献を参照されたい。
1. ビタミンK
2. ステロイド
3. 新鮮凍結血漿
4. 浸透圧利尿薬
5. 抗ウイルス療法
6. 抗凝固療法
7. 高アンモニア対策
8. 肝不全用アミノ酸製剤
9. 血液浄化療法(血漿交換および持続血液濾過透析)
10. 肝移植
11. その他

予後

わが国で肝移植が行われる以前の救命率は30%前後であった。肝移植が可能になってから約70%に改善したが、移植後も拒絶反応ないし原疾患の再燃に見舞われる場合があり、いまだ課題が多い。

参考文献

虫明聡太郎.28 1) 急性肝不全.日本小児栄養消化器肝臓学会編 小児栄養消化器肝臓病学.
p. 497- 501. 2014

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。