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はいどうみゃくべんけっそん
肺動脈弁欠損Absent pulmonary valve

小児慢性疾患分類

疾患群4
慢性心疾患
大分類53
肺動脈弁欠損
細分類67
肺動脈弁欠損

病気・治療解説

概要

先天的に肺動脈弁が欠損し、肺動脈弁輪狭窄、肺動脈拡大、心室中隔欠損を伴う先天性心疾患。気管圧迫、気管低形成をともなうことが多い。弁欠損のタイプとして、1)complete type(弁組織の完全欠損)、2)ridge type(弁が結節状に弁輪直上でridgeを形成)、3)partial absence(弁が一弁尖ないし二弁尖形成され、残りが欠損)を含む。大部分はFallot四徴症に合併し、その他の心疾患に合併することもある。

病因

形態形成としては、肺動脈弁の形成期(胎齢33日頃)にunderminingによる弁尖の分化障害が推測される。肺動脈拡大の原因として、胎生期における動脈管の無形成・低形成による右室から肺動脈への血流増加、右室—肺動脈間を往復する血流による容量負荷、右室漏斗部の偏位、肺動脈弁輪狭窄後拡張などが考えられる。遺伝的病因として、染色体22q11.2微細欠失を認める症例が多い(約50%)。他に6q欠失、15q21欠失、7q欠失、13部分トリソミーなどの染色体異常の報告がある

疫学

先天性心疾患の0.5%未満を占める稀少疾患である。単独で認められることはまれで、大部分が動脈管を欠損するFallot四徴症ないし漏斗部欠損型Fallot四徴症に合併して、上記2), 3)の弁欠損のタイプを呈する。その他、膜性三尖弁閉鎖に上記1)のタイプの弁欠損を合併しやすい。心房中隔欠損、両大血管右室起始、心内膜床欠損、完全大血管転位、右肺動脈上行大動脈起始などの合併例も報告されている

臨床症状

心不全に加えて呼吸不全(肺動脈の巨大な拡張による気管・気管支の圧迫)が特徴的。聴診上のto and fro雑音は本疾患の特徴である

診断

【胸部エックス線所見】
心拡大、肺門部腫瘤陰影(右または左肺動脈拡大)、肺気腫、無気肺

【心電図】
右軸偏位、右房拡大、右脚ブロック/右室肥大

【心エコー図】
肺動脈弁の欠損、肺動脈弁輪の低形成、右室ー肺動脈間のto-and-fro血流

【心臓カテーテル・造影所見】
右室圧上昇、肺動脈弁輪部狭小
主肺動脈、右ないし左肺動脈拡張、肺動脈から右室への逆流
右室から大動脈と肺動脈が同時に造影(Fallot四徴症、心室中隔欠損合併)
上記の検査所見を認める。確定診断には、心エコー、心臓カテーテル検査で肺動脈弁欠損を証明する

治療

呼吸器症状が軽度な乳児期以降の症例では、Fallot四徴症の心内修復術(心室中隔欠損閉鎖、弁付きパッチによる右室流出路形成)。新生児・乳児期から心不全症状に加えて、特に呼吸器症状が強い症例では、人工呼吸管理が必要となることも多く、乳児期早期に拡張した肺動脈の縫縮術、形成術と心内修復術、肺動脈弁挿入術が必要。拡張した肺動脈の圧迫による気道閉塞を解除するために、血管吊り上げ術を加える場合もある。術後も肺動脈狭窄および閉鎖不全による心不全、肺動脈の再拡張に伴う呼吸不全に対する、生涯的な内科的管理を行い、必要に応じて再手術

予後

大多数の症例では心不全、呼吸不全が進行して予後不良。乳児期早期に気管・気管支閉塞症状を呈し、呼吸器感染を契機に死亡する。外科治療なしで生存することはまれ。新生児期、乳児期を生存した中等〜軽症例では、気管支軟骨形成の成熟により乳児期以降症状は軽減するが、生涯的に内科的管理を必要とする。呼吸器症状が軽度な一部の症例では予後良好

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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