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ひだりかんどうみゃくはいどうみゃくきししょう
左冠動脈肺動脈起始症Abnormal origin of left coronary artery from pulmonary artery

小児慢性疾患分類

疾患群4
慢性心疾患
大分類25
冠動脈起始異常
細分類29
左冠動脈肺動脈起始症

病気・治療解説

概要

正常なら、左冠動脈が大動脈から起始するが、左冠動脈が肺動脈から起始する異常をいう。生後は左冠動脈が肺動脈という低圧系から起始することになるため、左冠動脈灌流域は、右冠動脈からの側副血行を介してしか潅流されなくなる。左冠動脈灌流域の虚血のために、心筋梗塞や、僧帽弁閉鎖不全、拡張型心筋症類似の左室機能低下などが起こる。治療されなければ乳幼児期に死亡する型と、右冠動脈からの側副血管が発達して心筋虚血が目立たない型とがある。どちらの型にしても、左冠動脈移植術など手術を行う。左室機能不全などあれば、それに対する内科的治療(利尿薬など)を行う。

病因

先天性である

疫学

比較的まれな疾患である

臨床症状

乳児の心筋梗塞、僧帽弁閉鎖不全、拡張型心筋症の臨床症状を呈する

心電図

心電図では、左冠動脈還流領域の心筋虚血を生じる。aVLに異常Q波、V1,V2には前壁の虚血性変化(深いQ波、R波減高、ST上昇、T波逆転)、V5、V6には側壁の虚血性変化(深いQ波、R波減高、ST上昇、T波逆転)をみる。成人での急性心筋梗塞の場合と異なり、ST上昇や血清酵素異常上昇は、乳幼児では1/3以下かそれ以下である

心エコー

心エコーでは、左冠動脈が肺動脈から起始していることが観察されるが、全てではない、約70〜80%と考えられる。残りの約20〜30%では左冠動脈は大動脈基部から起始しているようにみえる。右冠動脈は太いのが一般的である。カラードプラでは左冠動脈から肺動脈が血液が流入するのがみえる。左房、左室は拡大し、左室の収縮機能低下がみられる。しばしば、僧帽弁逸脱がおこり、僧帽弁閉鎖不全を合併する

カテーテル検査

心臓カテーテル検査では、大動脈造影で太い右冠状動脈がまず造影され、続いて側副血管と左冠状動脈が写り、肺動脈が薄く写る。右冠状動脈の選択的造影でより明らかとなる。左室造影では拡大して収縮能の低下した左室、僧帽弁閉鎖不全をみる。乳児では肺動脈・右室の収縮期圧は40〜50mmHgに上昇することがある。左室機能不全、僧帽弁閉鎖不全による

心筋シンチグラフィ

心筋シンチグラフィでは、本症に特異的な所見として、心筋シンチグラフィにて左冠状動脈領域(左室前壁、側壁、心尖部)に還流欠損を認める

診断

乳幼児で拡張型心筋症様変化または僧帽弁閉鎖不全をみたら、この疾患を疑い検査する。治療されなければ乳幼児期に死亡する型と、右冠動脈からの側副血管が発達して心筋虚血が目立たない成人型とがある。心電図の aVL 異常Q波は本症を疑う手がかりとなる。心エコーにて、右冠状動脈の拡大および左冠状動脈の肺動脈起始の所見で診断できる。確定診断は、心臓カテーテル検査だが、最近はCT、MRIでも可能となった

治療

左冠動脈移植術など手術を行う。左室機能不全などあれば、それに対する内科的治療(利尿薬など)を行う

予後

広範な心筋虚血による左室収縮不全がある場合には、予後不良である。左冠動脈移植術後には、ある程度左室機能は回復することが多い

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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