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さんひどろきしさんめちるぐるたるさんけっしょう
3-ヒドロキシ-3-メチルグルタル酸血症3-hydroxy-3-methylglutaric acidaemia; HMG-CoA lyase deficiency

小児慢性疾患分類

疾患群8
先天性代謝異常
大分類2
有機酸代謝異常症
細分類29
3-ヒドロキシ-3-メチルグルタル酸血症

病気・治療解説

概要

ミトコンドリアに存在する3-hydroxy-3-methylglutaryl-CoA (HMG-CoA)リアーゼの欠損により、肝臓でケトン体産生とロイシンの中間代謝が障害され、非ケトン性低血糖と代謝性アシドーシスをきたす、常染色体劣性遺伝の疾患である1)。約半数が新生児期に,そのほかは乳幼児期に嘔吐や意識障害、けいれん等で急性発症する。20%は発作時に死亡するとされ、発達遅滞などの後遺症を残す症例も多い。
本疾患は早期診断による発症予防・障害予防が可能と考えられるため、新生児マススクリーニングの一次対象疾患となっている。本症と診断がつけば、重篤な低血糖発作を来さぬよう注意深いフォローが必要である。

疫学

本邦では9例の報告と稀な疾患である。ただし、Reye様症候群やSudden unexpected infant deathと診断された児の中に紛れ込んでいる可能性は否定できない。

病因

HMG−CoAリアーゼをコードするHMGCL遺伝子の異常による。日本にはコモン変異は存在しない2)3)。

症状

1)低血糖発作
強い低血糖を呈し、嘔吐、意識障害、けいれん、多呼吸などを認める。多呼吸は代謝性アシドーシスの代償性と考えられる。新生児期では一過性低血糖や低体温、多呼吸、哺乳不良など非特異的な症状を示すこともあり注意が必要である。
2)肝腫大
肝機能障害を伴うことも多い。
3)神経症状
低血糖による後遺症として、てんかんや知的障害の合併を認める。

診断

1)一般血液・尿検査
安定期には通常以上を認めない。急性期の非ケトン性低血糖が最も重要である。また代謝性アシドーシスや高アンモニア血症、肝逸脱酵素の上昇を認めることも多い。
2)血中アシルカルニチン分析
C5-OH(3-ヒドロキシイソバレリルカルニチン)の上昇が特徴的である。ただし、C5-OHは本症の他にメチルクロトニルグリシン尿症,複合カルボキシラーゼ欠損症,β-ケトチオラーゼ欠損症などで高値を示し,単独で鑑別は困難である。C0(遊離カルニチン)の低下も認めることが多い。
3)尿中有機酸分析
尿中に3-ヒドロキシ-3-メチルグルタル酸、3-メチルグルタコン酸、3-メチルグルタル酸などの有意な上昇を認め、化学診断が可能である。特に3-ヒドロキシ-3-メチルグルタル酸の排泄増加は特徴的である。
③ 酵素活性
リンパ球や培養細胞などを用いた酵素活性測定による診断が可能である
② 遺伝子解析
原因遺伝子であるHMGCL遺伝子の解析による。

<確定診断>
血中アシルカルニチン分析でC5-OHの上昇があり、尿中有機酸分析で疾患特異的な代謝産物を認めたものを確定診断とする。もしくは酵素活性や遺伝子診断されたものを確定診断とする。

治療

1)食事療法
蛋白異化を防ぎ,ロイシン中間代謝産物の排泄をうながし,脂肪酸β-酸化系を抑制することが必要である。
特に本症では、通常低血糖時に脳への代替エネルギーとなりうるケトン体も著しく低値であることから,神経系に与える影響は強く,十分なグルコースの含まれる輸液により低血糖補正を直ちに行う。
また慢性期には一般的注意として空腹を避けることが必要である。

2)薬物療法
L-カルニチンの投与:静注で50−100mg/kg/回×3回/日を投与。
静注製剤が常備されていない場合は内服用 L-カルニチン 100−150mg/kg/日を投与する。

3)急性期の対処
低血糖以外の代謝性アシドーシスや高アンモニア血症に対しては、必要に応じて重炭酸ナトリウムや血液浄化療法など、必要に応じて対処する。

予後

いかに重篤な低血糖発作をきたさないかが重要で、1回の発作でも死亡したり、後遺症を残しうる。本症では年齢とともに発作をきたしにくくなるものの,思春期以降に低血糖発作を来した例もあり4) 5)、注意が必要である。

成人期以降

1)食事療法を含めた治療の継続
低血糖発作を成人期以降に生じた症例も報告されており5)6)、治療は継続して行う必要がある。
2)飲酒
基本的にアルコール摂取による嘔気など、体調を崩す誘因となりやすく、有機酸代謝異常症では急性増悪の危険性を伴うため、避けるべきである。
3)
妊娠と出産
有機酸代謝異常症の成人女性患者の妊娠・出産に関する報告例が出てきているが、個別の疾患については少数例に留まっているのが現状であり、慎重な対応が必要である。
4)医療費の問題
特殊ミルクを始めとする低たんぱく食品の購入や多量のカルニチン製剤服用、定期的な検査、体調不良時の支持療法など、成人期にも少なからぬ支出を強いられる可能性が高い。このため小児期に引き続いて十分な医療が不安なく受けられるよう、費用の公的補助が強く望まれる。

参考文献

1)Mitchell GA, Fukao T: Chapter102 Inborn errors of ketone body metabolism. In: Scriver CR, Beaudet AL, Sly WS, Valle D editors. Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease (8th edition). NewYork: McGraw-Hill, Inc; 2001. p2327-2356.
2)Muroi J, et al: Molecular and clinical analysis of Japanese patients with 3-hydroxy-3-methylglutaryl CoA lyase (HL) deficiency. Hum Genet. 2000 Oct;107(4):320-6.
3)高橋朋子 他:生後3ヶ月で発症した3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル-CoAリアーゼ欠損症の1例 日本小児科学会雑誌112:1249-1254, 2008
4)深尾敏幸 他:日本人HMG-CoAリアーゼ欠損症の臨床像:研究班におけるアンケート調査結果から. 日本先天代謝異常学会雑誌 27:151, 2011
5)Reimão S, et al: 3-Hydroxy-3-methylglutaryl-coenzyme A lyase deficiency: Initial presentation in a young adult. J Inherit Metab Dis. 2009 DOI 10.1007/s10545-009-1048-5

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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