特発性拡張型心筋症に対する「テイラーメイド方式心臓形状矯正ネット」の探索的医師主導治験を開始
名古屋大学医学部附属病院は7月13日、国の指定難病である特発性拡張型心筋症に関する探索的医師主導治験として「拡張型心筋症に対するテイラーメイド方式心臓形状矯正ネットの医師主導治験」を2022年5月から開始したと発表しました。
この治験では、治験調整医師を研究代表者である同院・心臓外科の秋田利明特任教授が、治験責任医師を同大大学院医学系研究科・心臓外科学の六鹿雅登准教授(同大医学部附属病院・重症心不全治療センター長)が担当。全国5大学(名古屋大学、東京大学、東北大学、慈恵会医科大学、大阪大学)の多施設共同試験として行われます。
特発性拡張型心筋症は、心臓の筋肉の収縮する力が低下することで左心室が拡張し、動機、呼吸困難や易疲労感などの症状が現れる国指定の難病です。末期心不全になると、唯一の治療法が心臓移植となります。しかし現在では、ドナー不足により毎年60名未満にしか適応されていないため、急速な治療の開発が必要となっているそうです。
今回の治験の代表者である秋田特任教授は、心不全悪化の最大の要因である進行性の心拡大(=心臓リモデリン)を防止するための「テイラーメイド方式心臓形状矯正ネット」を開発しており、これまでに特定臨床研究「拡張型心筋症に対するテイラーメイド方式心臓形状矯正ネットの臨床試験」に3名の患者さんが参加。その結果、いずれの患者さんも、安全性に問題なく、運動耐容能(最大酸素摂取量、6分間歩行距離)の大幅な改善が得られ、活動的な日常生活を送ることができているそうです。
そして今回、探索的医師主導治験として「拡張型心筋症に対するテイラーメイド方式心臓形状矯正ネットの医師主導治験(jRCT2042210157)」を開始。多施設共同で治験を実施することで、精度の高い治験結果を得られることが期待されるといいます。同治験で5名の患者さんでの安全性と有効性が確認できれば、製造販売承認を目指した検証的治験(12~20例)を2023年以降に行う予定としています。
研究グループは、プレスリリースにて、「今回の治験に用いる被験機器は、心不全患者の心臓画像から患者ごとに設計・製造されます。本被験機器は、令和2年度の先駆け審査指定制度の対象品目に選定されており、特発性拡張型心筋症患者の心不全進行を止めるだけでなく、QOLを改善する治療法として令和7年の実用化を目指しています」と述べています。