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視神経脊髄炎(NMO)患者さんの中枢神経系に集積するB細胞集団を特定、新たな治療標的として着目

京都大学は8月4日、神経の難病である視神経脊髄炎(NMO)の発症や進行に関わる免疫細胞「B細胞」の詳しい動きを明らかにしたと発表しました。

視神経脊髄炎(指定難病13、NMO)は、自己の免疫が誤って視神経や脊髄を攻撃してしまう自己免疫疾患のひとつです。再発を繰り返すことで、視力障害や歩行障害などが起こります。

多くの視神経脊髄炎(NMO)患者さんの血液中には、自身の体を攻撃する「自己抗体」が見つかっています。この自己抗体は、免疫細胞の一種である「B細胞」が作り出すことが知られていますが、視神経脊髄炎(NMO)患者さんの脳や脊髄を満たしている透明な液体である「髄液」の中で、このB細胞がどのように変化しているのかはこれまで詳しく分かっていませんでした。

今回、研究グループは、急性期の視神経脊髄炎(NMO)患者さんの髄液と血液のサンプルを詳しく調べ、高性能な装置を使って免疫細胞の状態を詳細に分析しました。その結果、病気の急性期にある患者さんの髄液中では、「CD21lo B細胞」と呼ばれる特定のB細胞の集団が著しく増加していることを見出しました。

このCD21lo B細胞は、自己免疫疾患で増えることが知られており、自己抗体を作り出す細胞に変化する前段階の細胞と考えられています。さらに、このCD21lo B細胞の増加が、視神経脊髄炎(NMO)の病気の再発しやすさとも関連していることが明らかになりました。

これらの発見は、視神経脊髄炎(NMO)の治療において、この「CD21lo B細胞」を標的とすることの重要性を示唆するものです。

錦織隆成氏はプレスリリースにて、「視神経脊髄炎という難病の“しくみ”に迫りたいという思いから、急性期の髄液サンプルを中心に研究を進めました。末梢血だけでなく髄液においても、自己抗体をつくる免疫細胞のサブセットが大きく変化していることが明らかになりました。急性に発症する希少疾患を対象としたため、限られたデータと向き合う困難もありましたが、得られた知見が新たな治療の手がかりとなり、患者さんの未来に繋がることを願っています」と述べています。

なお、同研究の成果は、「Brain」8月号に掲載されました。

出典
京都大学 プレスリリース

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