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好酸球カチオン性タンパク質(ECP)と好酸球由来神経毒(EDN)が水疱性類天疱瘡の発症に関与

北海道大学は6月10日、水疱性類天疱瘡の水疱形成に、好酸球から分泌される特定の顆粒タンパクが関与していることを発見したと発表しました。

指定難病のひとつ(類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)、指定難病162)である水疱性類天疱瘡は、自身の免疫が皮膚を構成するタンパク質を誤って攻撃することで、全身に水疱が生じる自己免疫疾患です。既存の治療法として、ではステロイドなどの免疫抑制剤が長期間使用されますが、これにより感染症のリスクが増加したり、糖尿病や骨粗鬆症などの副作用が生じたりすることが課題となっています。

水疱性類天疱瘡の患者さんの水疱部の皮膚には、多数の好酸球が認められ、その病態に「2型炎症」が関与していることは知られていましたが、これまでの研究ではその具体的な役割が明らかにされていませんでした。

今回の研究では、動物モデルを用いた実験により、水疱性類天疱瘡の病態に好酸球から分泌される特定の顆粒タンパクが関与していることを明らかにしました。研究グループは、2型炎症の分化に重要な転写活性化因子(Stat6)の欠損マウスを用いて二種類の異なる水疱性類天疱瘡マウスモデルを作製し、水疱形成への影響を評価しました。その結果、Stat6欠損マウスを用いた2つの水疱性類天疱瘡マウスモデルにおいて、水疱の形成および好酸球の浸潤が減少することが確認されました。また、自己抗体の存在だけでは水疱が発症せず、好酸球カチオン性タンパク質(ECP)と好酸球由来神経毒(EDN)という2つのタンパクが水疱形成に関与することを明らかにしました。

画像はリリースより

さらに、水疱性類天疱瘡患者さんの血液や皮膚において、好酸球顆粒タンパクが調べられ、患者さんの水疱内においてECPとEDNが上昇していることが検出されました。これらのタンパクが患者水疱部位に一致して集簇(しゅうぞく)していることも免疫組織化学染色で確認されました。ケラチノサイト(表皮細胞)を用いた実験では、ECPとEDNがその接着力を著しく低下させることも判明しました。

画像はリリースより

今回の研究により、ECPとEDNが水疱性類天疱瘡の治療ターゲットとして有望である可能性が示唆されました。これにより、より副作用の少ない水疱性類天疱瘡の新たな治療法の開発が期待されます。

なお、同研究の成果は、「Journal of Allergy and Clinical Immunology」オンライン版に6月9日付で掲載されました。

出典
北海道大学 プレスリリース

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