細胞がウイルスのRNAを認識するタンパク質の仕組みを解明
京都大学をはじめとする共同研究グループは、細胞がウイルスのRNAを効率的に認識するメカニズムの一端を解明したと発表しました。本研究結果は、細胞をウイルスから守る免疫システムの解明に加え、アレルギーや自己免疫疾患などの病態解明への応用も期待されています。
我々の身体は細菌やウイルスなどの外敵から自身を守るために免疫機能が働いています。SARSコロナウイルス2の様なウイルスはRNAウイルスと呼ばれ、RNAを遺伝情報の実態としているウイルスです。RNAウイルスが細胞内へ入ると自然免疫が活性化され、炎症性物質であるサイトカインが放出されます。細胞がRNAウイルスを認識する際に、RIG-I様受容体(RLR)ファミリーがウイルスのRNAを検出してシグナルを活性化することが知られています。RLRにはRIG-I、MDA5、LGP2の3種のタンパク質がありますが、特にLGP2はウイルス認識する機能しか持たず、詳細な作用は未解明でした。
研究チームはまず、MDA5がウイルスのRNAを認識する際にLGP2がどのように関与しているのかを調べた結果、MDA5がウイルスRNAにまとわりつき、LGP2がファイバーの形成を促進することを発見しました。また、アデノシン三リン酸(ATP)を用いてMDA5がウイルスRNAから離れることも促進していました。さらに、MDA5において下流のシグナル惹起に重要なCARDドメインは、RNAと結合する前は隠れており(不活型)、LGP2との結合により露出する(活性型)ことがわかりました。ウイルスのRNAから乖離した後のMDA5も活性型が保たれており、MDA5はウイルスRNAと接触した記憶を保っていました。本研究によりLGP2の、MDA5を介したウイルスRNA認識における重要な役割が解明されました。MDA5およびLGP2が関与している自然免疫系はウイルスからの防御に加え、がんや自己免疫疾患にも関与しており、本研究結果がこうした疾患の新たな診断法や治療法の開発に繋がると期待されています。
出典元
京都大学 研究成果