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筋強直性ジストロフィー1型の病態に関わる可能性のある新規因子としてZNF850を同定

国立精神・神経医療研究センター(NCNP)の研究グループは2月17日、筋強直性ジストロフィー1型(myotonic dystrophy type 1; DM1)の病態にかかわる可能性のある新規因子を同定したと発表しました。

筋強直性ジストロフィーは、筋強直と筋萎縮を特徴とし、成人では最も多い遺伝性筋疾患であるといわれています。また、筋強直性ジストロフィー1型(DM1)は、遺伝により世代を重ねるとより症状が重篤化することが知られています。筋強直性ジストロフィー1型(DM1)発症の原因遺伝子は、DMPK遺伝子のCTG繰り返し数が配列の異常な伸長が原因であり、CTG繰り返しが異常に伸長した変異遺伝子から生成される異常RNAの毒性によるものであるとわかっています。また、年ととるにつれて、DMPK遺伝子のCTG繰り返し数が増大し、重症化する傾向があることも知られています。

今回、研究グループは、筋強直性ジストロフィー1型(DM1)患者由来iPS細胞は、分裂増殖に伴って、ゲノム上のDMPK遺伝子のCTG繰り返し数に多様性を生じることから、筋強直性ジストロフィー1型(DM1)患者一人の細胞検体から作出したiPS細胞から多数の細胞クローン(単一の細胞から増殖した細胞グループ)を分離採取し、CTG繰り返し数の異なる細胞どうしの間で、何が異なっているのかを検討しました。

その結果、CTG繰り返し数が相対的に少ないiPS細胞でも多いiPS細胞でも両者同様に培養継続に伴うCTG繰り返し数の増加傾向を示し、またCTG繰り返し配列周辺のDNAメチル化状態にも大きな差異はありませんでした。

画像はリリースより

また、多数の細胞クローンのひと一つに、分裂増殖の前後でCTG繰り返し数がほとんど変化しない細胞クローンがあることを発見し、このクローンの遺伝子発現の網羅的解析を行いました。そして、このクローンにおいて発現が強く抑制されている遺伝子としてZNF850を同定しました。ZNF850遺伝子の発現抑制をしたところ、CTG繰り返し数の増加傾向が抑制されました。

画像はリリースより

これまで、CTG繰り返し数の不安定性にはゲノムDNAの修復に関連する酵素反応が関与していると言われていました。そこで研究グループは、ZNF850とDNA修復関連酵素の関係を検討。その結果、ZNF850蛋白は、DNA修復関連蛋白がCTG繰り返し配列を含むDNAの周辺にやってくる際の、「足場」として機能し、DNA修復蛋白がCTG繰り返し配列付近で働きやすくすることによって、CTG繰り返し数の不安定性を高めているのではないかと考えられました。

画像はリリースより

以上の研究成果より、ZNF850が筋強直性ジストロフィー1型(DM1)患者由来iPS細胞におけるCTG繰り返し数の不安定性に重要な役割を果たしていることを示しましたが、ZNF850が実際の筋強直性ジストロフィー1型(DM1)患者さんのCTG繰り返し数の変化にどういった役割があるかは、今後さらなる検討が必要としています。また、ZNF850は筋強直性ジストロフィー1型(DM1)以外の疾患の3塩基繰り返し配列の不安定性への影響も検討していく必要があると考えられます。なお、同研究の成果は、「Human Molecular Genetics」に2月15日付で掲載されました。

出典
国立精神・神経医療研究センター(NCNP) プレスリリース

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