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オリゴデンドロサイトの機能異常が筋萎縮性側索硬化症(ALS)マウスの運動機能障害を惹起

名古屋大学の研究グループは12月11日、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子産物である TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)がグリア細胞の一種であるオリゴデンドロサイトにおいて過剰に発現すると、機能異常を引き起こし、マウスの運動障害を惹起することを初めて発見したと発表しました。

筋萎縮性側索硬化症(指定難病2、ALS)は、手足・のど・舌や呼吸に必要な筋肉が徐々に痩せて力がなくなっていく疾患です。筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子産物であるTDP-43は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者さんの神経細胞やオリゴデンドロサイトで異常に凝集して、細胞に毒性を及ぼすと考えられています。

今回、研究グループは、遺伝性の筋萎縮性側索硬化症(ALS)由来の変異を有するTDP-43をオリゴデンドロサイトに過剰発現するモデルマウスを作成。同マウスを観察したところ、オリゴデンドロサイトに特異的な変異型TDP-43の過剰発現を確認し、加齢に伴い震えや歩行障害などの運動機能障害が出現しました。

画像はリリースより

次に、運動機能障害の原因を解明するために、オリゴデンドロサイトに着目した解析を実施。髄鞘を青く染めるウェルケ染色によって、モデルマウスの脳梁や脊髄で染色性が低下していることが判明し、髄鞘の減少が認められました。また、オリゴデンドロサイトの細胞死(アポトーシス)が観察され、その細胞死が運動機能障害を引き起こしていることが示唆されました。

画像はリリースより

さらに、TDP-43を過剰発現するオリゴデンドロサイトにおける遺伝子発現の異常を明らかにするため、RNAシークエンス解析を行った結果、モデルマウスのオリゴデンドロサイトでは、髄鞘形成に必要なコレステロール制御に関連する遺伝子の発現が低下する一方、アポトーシスを誘導する遺伝子の発現が上昇していました。これらの結果から、TDP-43の過剰発現がオリゴデンドロサイトによる髄鞘形成を破綻させてアポトーシスを誘導し、運動機能障害につながることが示唆されたとしています。

以上の研究成果より、TDP-43の過剰発現がオリゴデンドロサイトの機能低下や細胞死を引き起こし、マウスの運動機能障害を惹起することが明らかとなりました。今回の研究で作成したモデルマウスは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)におけるオリゴデンドロサイトの機能異常を解析するために有効的なツールであると考えられ、オリゴデンドロサイトを標的にした新たな治療法の開発につながることが期待されるといいます。

なお、同研究の成果は、「Acta Neuropathologica Communications」に11月27日付で掲載されました。

出典
名古屋大学 プレスリリース

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