血清IFN-λ3値測定による多発性筋炎・皮膚筋炎関連間質性肺疾患の重症化予測が可能
浜松医科大学は2月15日、日本医科大学と公立陶生病院との共同研究により、多発性筋炎・皮膚筋炎関連間質性肺疾患(polymyositis/dermatomyositis associated-interstitial lung disease:PM/DM-ILD)患者さんにおいて、血清IFN-λ3値は抗MDA5抗体陽性DM-ILDで高値となり、また、抗MDA5抗体陽性DM-ILDにおける重症度評価の指標として有用であることを明らかにしたと発表しました。
多発性筋炎と皮膚筋炎は、膠原病のひとつであり、筋肉に炎症が起こることで、力が入りにくくなったり、疲れやすくなったり、筋肉痛が起きたりする自己免疫性疾患です。多発性筋炎と皮膚筋炎の患者さんは、間質性肺疾患を合併する確率が50%と高く、特に抗MDA5抗体陽性のDM-ILDではしばしば急速に間質性肺炎が増悪して重症化することが知られています。しかし、これまで抗MDA5抗体陽性DM-ILDの重症度を正確に予測できる指標が明らかになっていなかったため、適切な重症度評価方法の確立が求められていました。
今回、研究グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や全身性エリテマトーデス、関節リウマチで上昇が報告されている「血清IFN-λ3」に着目し、多発性筋炎・皮膚筋炎関連間質性肺疾患の患者さん221名と健常人38名の血清を用いて、血清IFN-λ3値を測定し、重症化リスクや疾患予後と関連を検討しました。
その結果、多発性筋炎・皮膚筋炎関連間質性肺疾患の患者さんの血清IFN-λ3値は健常人と比較して有意に上昇していました。また、多発性筋炎・皮膚筋炎関連間質性肺疾患の患者さんのうち、抗MDA5抗体陽性DM-ILDで特異的に血清IFN-λ3値が高値となることを見出しました。さらに、血清IFN-λ3低値群(=<120pg/mL)と比較して、高値群(>120pg/mL)は、重症化リスクが高いことがわかりました。このことから、血清IFN-λ3値は抗MDA5抗体陽性DM-ILDの重症化リスクの指標となることを世界で初めて明らかにしました。
以上の結果から、血清IFN-λ3値を測定することで、多発性筋炎・皮膚筋炎関連間質性肺疾患において重症化リスクの高い一群である抗MDA5抗体陽性DM-ILDの早期発見に役立つことが示されました。さらに、血清IFN-λ3値測定は、抗MDA5抗体陽性DM-ILDにおいて重症化を予測しうる非侵襲的な新たなバイオマーカーとしての臨床的な有用性が期待できるといいます。血清IFN-λ3値は血液検査で測定可能なため、患者さんの負担なく、血清IFN-λ3値測定を用いることで、抗MDA5抗体陽性DM-ILD患者さんにおける正確な重症度の評価が可能となり、適切な疾患管理方法の確立にも大きく貢献できるものと考えられます。
なお、同研究の成果は、米国リウマチ学会雑誌『Arthritis&Rheumatology』に12月25日付で掲載されました。