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視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)の疫学、症状
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視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)とは
視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)は自己免疫疾患の1つと考えられています。自己免疫疾患とは、本来、外敵から身体を守るはずの“免疫系”に異常が起こり、自分で自分の身体を攻撃してしまう病気です。NMOSDの平均発症年齢は35歳前後で、患者の約9割が女性です。2012年の調査によると、日本国内で4,000人強の患者がいて、有病率は10万人あたり3.42人と推計されています。(難病情報センターホームページ2020年1月現在)また、橋本病(慢性甲状腺炎)やSLE、シェーグレン症候群など、他の自己免疫疾患を合併する患者さんが多いのも特徴です。
これまでの研究では、地域差や人種差などの違いは明らかになっていないことに加え、病気を引き起こす遺伝子も特定されていません。また、同じ家族内でNMOSDを発症することは非常にまれです。
脳や脊髄、視神経などの中枢神経系の神経細胞はアストロサイトという細胞に支えられています。アストロサイトにはアクアポリン4(AQP4)というタンパク質が存在しています。NMOSDは抗アクアポリン4抗体(抗AQP4抗体)という自己抗体がアストロサイトを攻撃してしまうことによって起こります。
視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)の症状
NMOSDは、車いすや杖が必要な歩行障害のある患者さんもいれば、疲れや感覚障害のみの患者さんもいたりと、その症状は、患者さん一人一人多彩と言っても過言ではありません。症状の種類は、炎症が起きて組織が破壊された場所(=病巣)によって異なります。また、疲労やウートフ現象など、病巣の場所に関係なく起こる症状もあります。病巣ができる場所は、病名にもあるように、視神経や脊髄が多いですが、そのほかにも脳幹や視床下部、大脳などさまざまです。
病巣の場所に関わらず、NMOSDの患者さんに多くみられるのが「疲労・倦怠感」です。この疲労・倦怠感にはNMOSDが直接的な原因となるものと、間接的な原因となるものがあります。直接的な原因によるものとしては、神経の疲れによる疲労や、日常生活に大きな影響を与えるほどの強い倦怠感があります。間接的な原因によるものとしては、まひや痛みなどの症状が原因になるものや、症状のつらさで疲労・倦怠感が出てくるもの、症状の緩和のために処方される薬の副作用で起こるものがあります。特にまひや痛みは患者さんのQOLを著明に低下させます。
また、真夏の外出や入浴など、一時的に体温が上昇することで症状が悪化する「ウートフ現象」と呼ばれる経験をする患者さんもいます。ウートフ現象は体温が下がることで症状の悪化が抑えられることが多くあります。そのほかにも、NMOSDでは性欲減退や勃起困難などの性機能障害が起こる場合があります。ですが、NMOSDは妊娠できる力(妊よう性)には影響がないことが分かっています。
※ウートフ現象…真夏の外出や長時間の入浴によって体温が上昇すると、NMOSDの症状が悪化することがあります。これをウートフ現象と呼びます。ウートフ現象は、体温が下がることで症状が回復します。再発ではありません。
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視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)の診断、経過・再発
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視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)の診断基準
視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)の診断には、一般的に「ウィンガーチャックの診断基準」2015年版が使われています。
NMOSDの診断基準(Wingerchukら,2015)成人例におけるNMOSDの診断基準
アクアポリン4抗体陽性NMOSD
1. 少なくとも1つの主要臨床症候がある
2. アクアポリン4抗体陽性(実施可能な最良の検査を用いる,細胞を用いた抗体検査が強く推奨される)
3. 他疾患の除外アクアポリン4抗体陰性NMOSDあるいはアクアポリン4抗体検査結果不明のNMOSD
1. 1回以上の臨床的増悪で少なくとも2つの主要臨床症候があり,以下の条件をすべて満たす
a.少なくとも1つの主要臨床症候は,視神経炎,3椎体以上の長い横断性急性脊椎炎,あるいは最後野症候群
b.空間的多発(2つ以上の異なる主要臨床症候)
c.該当する病巣のMRI所見が下記の条件も満たす
2. アクアポリン4抗体陰性(実施可能な最良の検査を用いる)あるいはアクアポリン4抗体検査が未実施
3. 他疾患の除外
主要臨床症候
1. 視神経炎
2. 急性脊髄炎
3. 吃逆あるいは嘔気,嘔吐を起こす最後野症候群のエピソード
4. 急性脳幹症候群
5. NMOSDに典型的な間脳のMRI病変を伴う症候性ナルコレプシーあるいは急性間脳症候群
6. NMOSDに典型的な脳MRI病変を伴う症候性大脳症候群アクアポリン4抗体陰性NMOSDおよびアクアポリン4抗体検査結果不明のNMOSDのMRI追加要件
1. 急性視神経炎では,脳MRIが(a)正常あるいは非特異的白質病変のみ,または(b)視神経MRIでT2高信号病変あるいはT1強調ガドリニウム造影病変が視神経の1/2以上に伸びている,または視交叉に病変があることが必要である
2. 急性脊髄炎は,これに関連する3椎体以上に連続性する髄内MRI病変(長大な横断性脊髄炎の病変),または急性脊髄炎に合致する既往歴を有する患者において3椎体以上に連続する局所性の脊髄萎縮がみられることが必要である
3. 最後野症候群は,これに関連する背側延髄/最後野の病変がみられることが必要である
4. 急性脳幹症候群は,これに関連する脳室上衣周囲の病変がみられることが必要である1つの所見のみでNMOSDと診断したりあるいはNMOSDを除外したりせずに,臨床症候と経過、MRIおよび検査所見などを総合的に判断してNMOSDの診断をすることが重要である。
視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)の経過・再発
視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)で最初に症状が出る(発症)時は多くの場合、重い症状となります。発症後、未治療のままでいると、新しい症状が出る、もしくはもともとあった症状が悪化して24時間以上続く、「再発」状態になることがあります。1回の発作で、新しい、もしくはこれまでよりも強い障害が出る場合があります。また、未治療のままでいると再発を繰り返すことがあるため、診断後の治療は主に再発予防が中心となります。発症・再発時の治療が必要な時期を「急性増悪期」といいます。急性増悪期が過ぎても症状が残る場合があり、歩行や運動などが強く制限されると、二次的に足腰が弱くなって全身状態が悪くなる「廃用症候群」と呼ばれる状態になります。また、痛みやしびれは体調や精神的なストレスなどの内面的なものや、季節や気候といった環境的なもので強くなったり弱くなったりします。NMOSDの患者さんは症状によって生活の質(QOL)に影響を受けている患者さんが多く、その評価のためにMS(多発性硬化症)で使用されている「総合障害度評価尺度(EDSS)」と呼ばれる指標が使われます。
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視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)の治療
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視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)の治療(1)急性増悪期
視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)の症状の程度は、日や環境によって変わるため、一時的に症状がひどくなったように感じる場合もありますが、それが必ずしも「再発」とは限りません。「再発」とは症状が「24時間以上」続くことが定義されていますが、どのタイミングで治療を行うべきかは個々の患者さんで異なるので、担当医と相談しましょう。ここでは、急性増悪期に行われる治療を紹介します。
ステロイドパルス法
日本神経学会監修の「多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017」では、「NMOSDの再発時・発症時にはステロイドパルス療法」を行うよう推奨しています。ステロイドパルス療法は、ステロイド薬を3~5日間点滴する療法です。ほとんどの場合、短期間で効果がみられますが、場合により追加投与や血液浄化療法を行うこともあります。ステロイドパルス療法が完了した後は、内服のステロイド薬に切り替え治療を続け、その量を徐々に減らしていきます。
血液浄化療法
重症の場合や、ステロイドパルス療法で効果がみられなかった場合、また大量のステロイド投与ができない患者さんでは、血液中から抗AQP4抗体などのNMOSDに関連する因子を取り除く、血液浄化療法がおこなわれます。血液浄化療法は、一度身体から抜きとった血液を機械に通して単純に血漿を廃棄する「単純血漿交換療法」や「二重濾過血漿交換(DFPP)」と、吸着剤を充てんした「カラム」と呼ばれる機器を通して免疫グロブリンを除去する「免疫吸着療法(IAPP)」が主に用いられます。血液浄化療法は最初のうちは週に2~3回行われ、一般的には1か月あたり最大7回、3か月まで行うことが可能です。
ステロイド薬の内服
軽い再発では、飲み薬のステロイド薬のみで治療することがあります。
視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)の治療(2)再発予防
視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)の再発の予防では、国内ではステロイド薬の飲み薬がよく使われます。再発からの時間の経過とともに、ステロイド薬を減量していきますが、減量により症状が悪化する恐れもあり、症状の変化を慎重に観察する必要があります。自己判断で減量や中止をすることはせず、気になることがあればすぐに担当医や薬剤師に相談しましょう。
また、再発予防にはステロイド薬だけではなく免疫抑制剤が使われることがあります。免疫抑制剤単独の場合もあれば、ステロイド薬と併用して使われる場合もあります。これに加えて、近年では、抗補体モノクローナル抗体製剤が新たに保険適用治療薬として承認されるなど、治療の選択肢は拡がっています。これらの治療中は感染症にかかりやすくなりますので、過去に悪化がなければ生ワクチン以外の不活化ワクチン接種やマスクの着用など、感染症対策を積極的に行いましょう。また、いずれの薬剤においてもそれぞれ注意すべき副作用があるので、担当医や薬剤師と相談しながら治療していきましょう。
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日常生活の過ごし方
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再発リスクを高めないために
視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)は、免疫系の異常が再発に関連すると考えられており、免疫にかかわる環境変化には特に注意が必要です。ここでは、日常生活において、注意が必要なものについて解説します。
感染症を予防する
身体の免疫系のバランスが崩れる感染症には注意が必要です。外出から帰った際には入念に手洗い・うがいを行ってください。感染症対策の1つにインフルエンザ、肺炎球菌ワクチンの接種があります。一方で、まれにワクチン接種によって免疫異常を起こす場合もあります。
また、使用している薬剤によっては生ワクチンの接種が受けられない場合もあるので担当医や予防接種実施医療機関の医師などにお薬手帳を提示して必ず相談しましょう。
疲れ&ストレスを溜めない
身体&精神の疲労は大敵です。身体の疲れが溜まったら無理せず、すぐに休息を。そして、日ごろからストレスを溜めない生活と、ストレスを軽減させる息抜き法がすぐにできるように準備しておきましょう。
そのほかにも過度な日焼けやアレルギー物質への接触など、免疫系に影響を与える生活はできるだけ控えましょう。とはいえ、家にこもってばかりだと、足腰が弱って、また新たな障害となる可能性があります。何か大きな予定や行事がある際には、担当医や薬剤師に相談しましょう。
廃用症候群にならないために
急性増悪期だけでなく、普段の生活でも痛みやしびれに対し、身体をあまり動かさない生活をしていると、筋力や体力が落ち、新たな障害が発生する可能性があります。こうした状態は「廃用症候群」といいます。NMOSDに限らず、廃用症候群は予防が可能です。ここでは状態別にどのようなことに気を付けるべきかについて解説します。
基礎体力を維持しよう。でも、頑張り過ぎは禁物
廃用症候群は基礎体力・筋力の低下から起こります。予防するためには適度な運動が必要です。基礎体力・筋力の維持にどのくらいの運動が必要かは患者さんによって異なります。ですが、頑張り過ぎは禁物です。頑張り過ぎた結果、疲労が溜まってしまっては元も子もありません。まずは簡単な運動からはじめて、徐々に運動量を増やしていくのがよいでしょう。
ただし、NMOSDでは、日によって症状が大きく変わります。体調が悪い時には、しっかり休むことも重要です。さらに、運動をして体温が上がった結果、症状が一時的に強くなるウートフ現象にも注意が必要です。運動の際には、体温が上がりすぎないように、直射日光が当たらない工夫や、体温を下げるような冷たいものを常備しておくなど、準備しましょう。
急性増悪期~回復期は焦らずにゆっくりと
急性増悪期は治療を受けることを最優先に考えてください。急性増悪期の治療終了後は積極的に身体を動かすようにしますが、新たな運動障害などが発生した場合、再発前にはできたことができなくなってしまうこともあります。
入院時や発症後の急性期は早期離床や廃用症候群防止を主な目的とした「急性期リハビリ」を行いますが、ある程度期間が経つと在宅への復帰などを目指した心身機能回復・ADL向上を主な目的とした「回復期リハビリ」がメインとなります。それぞれ医療保険、介護保険となっていますので病院の医療相談室、ケースワーカーに相談しましょう。また負荷をかけすぎるとステロイド薬内服患者さんでは脊椎圧迫骨折や大腿骨骨頭壊死をきたすこともあります。たばこ、アルコールを控えて、無理をしてはいけません。
食生活
視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)の患者さんには食べ物や飲酒、カフェインなどに制限はありませんが、症状やお薬によって注意が必要なものがあります。また、調理面においても、なるべく疲労やストレスを溜めないひと工夫が必要です。
便秘&体重増加に注意を
NMOSD患者さんの多くが便秘に悩んでいます。その理由としては、排便にかかわる神経が影響を受けている場合や運動機能の低下、服用するお薬による薬剤性便秘などがあります。便秘にならないよう、水分を多く摂取したり、食物繊維を多く含む食材を食べるようにしましょう。
また、ステロイド薬の副作用として、食欲増進による体重増加があるため注意が必要です。運動量が減ったりすると、その増加に拍車がかかってしまいます。とはいえ、あれもダメ、これもダメではストレスが溜まってしまいます。普段通りに食事を楽しむことが一番です。ただし、ウートフ現象には注意が必要です。ラーメンや汁物など熱いものを口にするときは体調の変化に気を付けてください。
調理の際にも無理せずに
調理の際も無理せず、自分の身体の調子と相談して行いましょう。椅子に座って調理をするなど疲れない工夫や、あまり力を入れずに調理できるよう、フードプロセッサーを使うなど、省エネ調理を心がけましょう。また、加熱調理の時に体温が上がり、ウートフ現象が起こるのを避けるために、換気扇を回したり、窓をあけるなど、温度に気を付けてください。
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さまざまな症状への対処法
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疲労・倦怠感、ウートフ現象
視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)の患者さんに多くみられる疲労や倦怠感。突然、何の前触れもなく大きな疲労や倦怠感を感じる患者さんは多くいます。NMOSDが原因で起こる疲労や倦怠感には、それに対応するお薬が処方されることがあります。一方、ステロイド薬や痛み止めなど、飲んでいるお薬が原因で起こる疲労や倦怠感もあります。運動や家事など、身体を動かしていないのに疲労や倦怠感を感じたら、まずは担当医や薬剤師に相談してみましょう。
また、日々の生活や住まいの環境を見直すことも重要です。毎日、決まった時間に疲労や倦怠感が訪れる場合、その前の行動(例えば、昼食の支度など)が影響している可能性があります。その場合は、疲労や倦怠感が起きそうな時間帯に、昼寝などの休息時間を入れる、疲労や倦怠感を起こす可能性のある日々の行動スケジュールをより余裕を持ったものにする、などで対応しましょう。
また、必要なものを1か所にまとめる、家の中のさまざまなところに休息できるような椅子を配置するなど、疲れない、休みやすい住環境の整備をするのも良いでしょう。空調や温度管理もウートフ現象対策に重要です。室温管理に加え、入浴時にも低めの温度で浸かり、身体の様子をみながら長湯しないようにしましょう。
痛み・しびれ、排泄障害
視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)に伴う痛みやしびれに対しては、通常、痛み止めのお薬で対処するのが一般的におこなわれています。また、強い痛みに対しては、神経ブロック注射や脊髄刺激療法などの処置を行う場合があります。痛みやしびれには、炎症が原因によるものや精神的なものに起因するものなど、さまざまな種類があり、それぞれに合った対処方法があります。自己判断や市販薬で対応せずに、まずは担当医や薬剤師に相談しましょう。
日常生活での痛み・しびれに対しては、マッサージやサポーターを活用するなど、患者さん一人ひとりによって、対処法が異なりますので、自分に最も適したやり方を探しましょう。道具を使うだけでなく、気分転換をする、昼寝をする、などの行動様式の変化でも痛み・しびれが改善する場合もあります。また、痛みやしびれが起こっている時は温度に対する感覚がにぶっている時があります。転倒、打撲ややけどに十分注意しましょう。
NMOSD患者さんに多くみられる排泄障害の症状には、何回もトイレに行きたくなってしまう過活動膀胱、排尿したのに尿が残っているような気がする残尿感、尿が出なくなる尿閉、尿が漏れてしまう尿失禁、細菌に感染する尿路感染症や、便秘や便が漏れてしまう便失禁などがあり、それぞれ病院で処方されるお薬で治療・改善が可能です。また、日常生活での尿失禁・便失禁対策として、市販の専用下着やパッドも利用できます。
まひ・筋力低下、視覚症状
まひや筋力低下で日常生活に支障が出ている場合は、リハビリテーションや補装具の使用が中心になります。リハビリテーションは専門の理学療法士や作業療法士とともにすすめますが、視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)の患者さんのリハビリテーションでは体温上昇に伴うウートフ現象に留意が必要ですので、自分でリハビリ先を探すのではなく、NMOSDのリハビリテーションに熟知したリハビリ先を担当医から紹介してもらうのが良いでしょう。車いすや杖などの補装具についても、理学療法士や作業療法士に相談するのが良いでしょう。日常生活を送るうえでは、スロープや手すりをつけるなど、リフォームを行う患者さんもいます。その場合、市区町村などから補助が出る場合もありますので、医療ソーシャルワーカーに相談してみましょう。
注)上記現在の保険医療システムでは、病院での長期リハビリテーションは難しくなっています。
NMOSDに伴う視覚障害ではリハビリテーションや補助具の利用が中心になります。視覚障害の専門家として視覚障害リハワーカー(歩行訓練士・視覚障害者生活訓練指導員)がいますので、まずは担当医や眼科医に相談してみましょう。また、サングラスや拡大鏡などの補助具や、パソコンを使うときには文字サイズを大きくするなどの環境調整も行いましょう。
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妊娠・出産について
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視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)の発症・再発に特定の遺伝子の関連は今のところ報告されておらず、また、NMOSDが家族内で発症することはまれなことから、NMOSD自体に遺伝性はないと考えても問題ないでしょう。ですが、妊娠・出産によって病気の活動性が高まることがあり、妊娠中・授乳中は飲んでいるお薬の影響などにも注意が必要ですので、不安なことがあれば必ず担当医に相談するようにしましょう。
日本を含めた国際共同研究の結果、60人のNMOSD患者さんの妊娠に関する調査では、NMOSDの発症前後での流産や妊娠高血圧症候群の発症率が高かったことが分かっており、妊娠前からのNMOSDの活動性を抑えることの重要性が指摘されています。また、NMOSDのお薬に限らず、お薬の中には、妊婦または妊娠している可能性のある女性への投与は慎重投与もしくは投与禁止とされているものもあり、妊娠と治療の両立には非常に注意が必要です。
出産はもちろん、産後の子育ては、NMOSDの患者さんに限らず、大きな負担がかかります。疲労を溜めないように、家族や周囲の方々の協力は不可欠です。また、出産後にはNMOSDの再発リスクが高まるという報告もあるため、産後3か月から6か月は特に注意が必要です。なお、授乳に影響のあるお薬もあるため、授乳については担当医と相談するようにしましょう。
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職場、家族や周囲には、どう伝える?
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視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)の患者さんの中には、病気と上手く付き合いながら、仕事をしている方も多くいます。NMOSDの症状には疲れや倦怠感、痛みやしびれなど、外見からは判断しにくいものがあり、職場の協力が不可欠です。どういった症状があり、どういった配慮をしてほしいか、通院スケジュールなどを職場の上司や人事担当者に整理して伝えましょう。
もし伝えるのが苦手な方であれば、担当医に意見書を書いてもらうのも良いかもしれません。仕事中はストレスを溜めないよう、こまめに休みをいれたり、パソコンの文字サイズを大きくするなど、注意が必要です。
どうしても、現在の職場での就労が難しい場合は、ハローワークに相談しましょう。ハローワークでは難病患者就職サポーターがいて、難病の人を対象にした就労支援制度があり、職探しや現在の仕事に関する相談を受け付けています。また、身体障害者手帳を交付された方には障害者枠の求人に応募するという方法もあります。とはいえ、再発時やその回復期など、治療を第一に考えるべき時期では「仕事をしない」「休む」という選択肢もあることを知っておいてください。そこから、可能な業務量がある職場を探していくことも可能です。
視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)は、外見から分からない症状に悩んでいる患者さんが多く、「分かってもらえない」と感じる人も多いかもしれません。ですが、病気のことを伝えて、理解してもらうことで、配慮してもらったりと大きな安心が得られます。ただし、会う人すべてに病気のことを伝える必要もありません。例えば年に1回しか会わないような遠い親類などには「伝えない」という選択肢もあります。
友人や周囲の人も同様です。ただし、「病気のことを知られるのが怖い」と外出する機会を失ってしまい、運動・行動量が減って廃用症候群になり、また外に出られなくなる、という負のスパイラルは避けたいところ。患者さん自身だけでなく、家族を通して説明してもらうこともいいかもしれません。
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お役立ち情報
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難病の医療費助成制度
問い合わせ先:お住まいの地域の健康福祉センターまたは保健所
NMOSDと診断され、決められた条件を満たすと、医療費の一部が助成されます。身体障害者手帳の交付
問い合わせ先:お住まいの市役所・町村役場
身体に障害が残った際には、身体障害者手帳が交付されます。等級により、日常生活に必要なものや補装具などの給付や税金の免除、公共機関の利用料金減免などの措置が受けられる場合があります。生活費助成
問い合わせ先:お住まいの市区町村
障害基礎年金や障害厚生年金、生活保護制度などがあります。就労支援
問い合わせ先:お住まいの地域のハローワーク
ハローワーク「難病患者就職サポーター」は、現在の仕事についてや求職の相談を受け付けています。介護保険制度
問い合わせ先:お住まいの地域の保健所もしくは市役所・町村役場の福祉課
介護を必要としている方に対し、その費用を一部負担してくれる保険制度です。そのほかにも、携帯電話の通話料金割引サービスなど民間企業で行っている助成や、ヘルプマークの配布なども行っています。上手に活用しましょう。
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